2016 Fiscal Year Research-status Report
司法的救済からみた自治体の防御型事前手続保障の再検討
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15K16924
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
中嶋 直木 熊本大学, 大学院法曹養成研究科, 講師 (20733992)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 防御型参加 / 協働型参加 / 絶対的手続権 / 地域原子力防災協議会 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度における機能的地方自治論の研究から、①防御型参加手続(=国政参加)のみならず、②協働型参加手続(=国政参加)の重要性が明らかになった。そこで、28年度では、①については司法的救済の、特に原告適格論を念頭において、②については制度設計論を念頭において、学説・判例を検討した。 ①については、我が国における議論が乏しいため、ドイツにおける判例・学説を検討した。特に、航空交通法においてゲマインデ(=市町村)に認められていた「絶対的手続権」について、その理論的根拠を中心に学説・判例を分析した。それに加え、ゲマインデの参加が議論されている、原子力法、建築法、そして環境・権利救済法といった分野の検討にも着手した(なお、これらの成果の一部は、平成29年2月におこなわれた熊本公法研究会において、報告されている)。 ②については、まず第一に、それが現代の行政法理論においては「公共部門の多層化(複線化)」、「機関適性」及び「協働」論など多様な観点からも正当化されることを明らかにした。次に、我が国における原発問題を素材として、その(ⅰ)災害対策と(ⅱ)安全規制という観点から、自治体の協働型参加の可能性を探求した。 (ⅰ)については、地域原子力防災協議会について、その組織・機能から、国と自治体の「協働」の場としての可能性を探った。(ⅱ)については、ドイツにおける個々の参加手続類型(聴聞・態度決定・提案権・討議・協調・諒解(一致))の意義・機能をそれぞれ明らかにし、安全規制における制度設計において、国と自治体との協働が形式的なものにとどまることなく、実効的なものとなるような方向性を探った(なお、この成果の一部は、平成29年3月に、基盤研究(B)「継続的更新機能・公益性適合機能・民主的正統化機能を内在した行政法システムの構築」の研究会において報告されている)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は、①防御型参加手続と②協働型参加手続という視点を研究の基礎に据えたことによって、研究の見通しが立ち、学説・判例の整理・検討が大幅に進んだ。そのため、前年度の遅れを取り戻すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
①の防御型参加手続については、ドイツにおける立法例及び判例の検討分野を航空交通法から原子力法、建築法、環境権利救済法といった分野にまで広げてゆくことで、この参加類型の理論に厚みを加えてゆきたい。 ②の協働型参加については、我が国においてもドイツにおいても理論的蓄積が乏しいため、行政法理論のみならず、行政学等の他分野の知見も含めた研究をおこなってゆきたい。
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Causes of Carryover |
予定したドイツでの文献収集ができていないため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
29年度において夏期休業期間を目処にドイツでの文献収集をおこなうことで、28年度の未使用額を執行する予定である。
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