2017 Fiscal Year Annual Research Report
Reconsideration on the freedom of expression,especialy on Pressefreiheit in Germany
Project/Area Number |
15K16925
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
阿部 和文 大阪市立大学, 大学院法学研究科, 准教授 (40748860)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 憲法 / 表現の自由 / プレスの自由 / ドイツ / ヴァイマール憲法 / 緊急命令 |
Outline of Annual Research Achievements |
29年度は前年度の「推進方策」に示した作業を継続した。前年度迄に収集した資料が膨大である為、本年度は海外での新規の資料収集を控え、現有の資料を用いて作業を行った。二次文献の不足により引き続き困難な作業となったが、得られた知見を基に複数の研究会で報告を行った(論稿は30年度前半に投稿する予定)。亦、情報流通の自由と人格権の保護に関する国内判例に就き、研究で得られた着想を踏まえて報告を行った。 主たる成果として、クルト・ヘンチェルの言説の特徴は次の如く纏められる:[A]プレスの自由の本質は「精神的なもの」を伝達し他者を説得する所にある。この点でWRV所定の意見表明の自由と重なる。但し、プレスの自由は執筆・編集から販売迄の全過程を保護しており、経済的な実態に鑑みて広告欄にも保護が及ぶ。[B]Aの指標により、過激なアジテーションや誹謗中傷等は保護から除外される。[C]Aの条件を充たす出版物は同時に憲法の保護にも服するが、その余の表現は法律レベルの保護しか受けず、後法優位の原則に服する。[D]特に緊急命令を正当化する論拠としては、①規制対象はBに該当し格別の保護に値しない(反面、それに至らない客観的な批判は規制されない)事、②政治的混乱が解消される迄の暫定的な措置である事、等が挙げられる。此れに対し③プレスの公的な役割・責務に関する言及は乏しい。 他の論者と比較した場合、D②の如き状況への危機感に就ては、一応の了解が成り立っていた。これに対し、ヘンチェルの特徴はAB・D①、即ち「精神的なもの」と云う指標を立て、それに基づいて規制の可否を弁別せんとした点にある。単に実際の害悪や現実の必要を直に援用するのでなく、一定の理論的な枠組を通して判断を行う思考様式は、他の論者には殆ど見られない。現在から見た結論の当否とは別に、表現の自由の解釈論を組み立てる上で参考となる所以である。
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