2015 Fiscal Year Research-status Report
人格権の「存否」・「帰属」及び「侵害」の準拠法の探求とその適用関係の分析
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15K16928
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
羽賀 由利子 金沢大学, 法学系, 准教授 (90709271)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 国際私法 / 人格権 / 準拠法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、まず、人格権の準拠法のうち侵害部分について整理・分析した。この点については、我が国及び外国で十分な判例と学説の蓄積が見られるためである。人格権の侵害に関して、人格権の一類型とされる名誉権の侵害の準拠法決定則については明文の規定があり(通則法19条)、その他の人格権の侵害については明文の定めはない。同条が氏名権やプライバシー権等のその他の人格権の侵害にも適用され得るかについて、条文の文言や立法過程における議論、裁判例及び学説を整理・分析し、その他の人格権については一般則たる17条によることになろうと結論付けた。この点については、損害の発生地としていずれの地に連結するかについての相違が見られるが、各国でも基本的には同様のアプローチが採用されている。その上で、人格権の帰属についての準拠法との適用関係について検討した。一般に人格権の準拠法は属人法によるとされるところ、侵害準拠法との適応問題が起き得る点を指摘する報告をAnnual Conference of Journal of Private International Law (Cambridge, United Kingdom)で行い、大陸法系諸国及び英米法系諸国の同分野の研究者からおおむね肯定的な意見を得た。 他方、同時に比較法的検討に際して特に最新の外国判例については若干カバーできていない裁判例等についての指摘もあり、これら検討の及んでいない点については次年度における継続的な分析の必要性を認識している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究目的からすると、我が国の法制・裁判例及び議論が分析対象の中心となり比較法的検討の一部が次年度実施となってしまったものの、次年度に予定していた我が国の議論における適応問題に前もって踏み込んだ検討を行った。この点で、当初の計画とは若干のずれがあるものの、進度としてはおおむね所期の目的を達成できたものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、本年度実施の報告を基礎とする英語論稿の執筆に取り組む。同時に、本年度実施の比較法検討部分の補足として、最新の外国判例についての情報のアップデートと分析を行う。 その上で、人格権それ自体の存否の準拠法の選択方法についての分析を進める。すなわち、人格権自体にかかわる問題の準拠法として、従来通説とされている属人法が適合するかの批判的検討である。この分析に際しては、人の人格に関する権利、すなわち人格権自体が実質法上どのようにとらえられているかの検討も必要となる。そこで、当初の計画よりもさらに踏み込む形で、我が国民法上の議論を中心として、「人格権」概念の理解についての分析を行う。
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Causes of Carryover |
購入予定の一部書籍について、発売が遅れたため本年度内の購入ができなかった分、残額が生じている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度(4月、5月に発売見込み)の発売に際して、当該残額を用いて購入する。
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Research Products
(2 results)