2018 Fiscal Year Annual Research Report
The confluence of the right of self-defence and the plea of necessity in the extraterritorial use of force against non-state actors
Project/Area Number |
15K16932
|
Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
田中 佐代子 法政大学, 法学部, 准教授 (20709323)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 自衛権 / 緊急避難 |
Outline of Annual Research Achievements |
安全保障をめぐる従来の議論は主として外国国家からの攻撃の危険を想定してなされてきたが、2001年9月11日の米国同時多発テロは 、非国家行為体がもたらしうる脅威の大きさを衝撃的な形で世に示した。様々な集団・個人によるテロ行為が頻発し被害が増大している今日、非国家行為体に対する越境軍事行動がどのような法的根拠にもとづいて認められうるのかを明らかにすることが喫緊の課題となっている。本研究は、自衛権と緊急避難についての検討を統合的に行うことでこの課題に取り組んできた。 本研究の最終年度となった2018年度は、これまでの作業を継続し発展させるとともに、全体の成果のとりまとめを行った。 特に、「領域国の意思・能力の欠如」理論(‘unwilling or unable’ doctrine)に注目して論文を執筆した。本理論は、一般に、テロ攻撃などの武力行為をなす非国家行為体に対して、その所在する国家(領域国)が実効的に対処する意思または能力を欠く場合には、武力行為の被害国は領域国の同意を得ずに域内で武力を行使して自ら脅威に対処することができる、という法命題として理解されている。軍事行動の正当化を図る従来の議論との関係で、意思・能力欠如理論がどのように位置づけられるかを分析した。その結果示されたこととして、まず、解釈論上の根拠の観点からは、同理論は既存の正当化理論と連続的だと言える。他方で、原理的根拠の観点からは、意思・能力欠如理論はすぐれて今日的な特徴を有する。すなわち、非国家行為体の脅威にさらされた国家自身のためだけでなく、国際社会全体に共通する利益のためにも、軍事行動がなされることを認めるという点に、新規性がみとめられる。
|
Research Products
(1 results)