2015 Fiscal Year Research-status Report
フランスの労働政策決定時における労使交渉前置主義の意義と日本への示唆
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15K16941
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
小山 敬晴 早稲田大学, 法学学術院, 招聘研究員 (00633455)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 労使代表者の法案作成参加 / 労働組合の代表正統性 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、フランスにおける2007年1月31日の法律と、2008年8月20日の法律の分析、およびそれぞれの法律を歴史的文脈において位置づけるために、19世紀後半から現在にわたるフランス労使関係に関連する文献の収集と分析を行うことを当初の計画としていた。文献収集のために、フランス現地に赴くことを予定していたが、出張予定の直前にパリでテロが発生したため、安全性を考慮し、出張を取りやめた。このような計画変更があったものの、以下の通り、研究計画に概ねしたがった研究成果をあげることができた。 2007年法によって、労働法案作成過程に労使代表者の意見聴取が必須とされたことについては、労働・雇用問題が政治においても最重要分野となっている現在、政府作成法案がゼネストの発生により頓挫したことを経て、労働者の意見を反映させる法案作成制度の構築が必要とされたことが明らかとなった。そして、労働組合の代表正統性に民主主義的正統性を付与した2008年法については、企業別協定の活用を目的するためだけでなく、2007年法の制度の正統性を強化することが目的とされていたことが明らかとなった。 歴史的文脈から2007年法を位置づけなおすと、フランスでは、1920年に設置された経済評議会という政府諮問機関に労働者代表の参加を許可したことが、労働組合の労働法政策決定参加の歴史の端緒であるが、戦後は、全国レベルでの労使代表者の合意が草案となって法律が作成されるという慣行が定着していたところ、非成文の制度であったため、政府が当該慣行を遵守しないケースが生じたことから、2007年法による当該慣行の成文化が図られたことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年パリで発生したテロの影響で、フランス現地にてフランス労使関係に関する資料収集を行うことができなかったが、国内で遂行できる研究は、概ね研究計画に従って遂行することができた。ところが、2015年から2016年現在にいたるまで、フランス労使関係法の大改正にむけた法案が政府より提出されており、本研究目的と関連する部分については、改正法案の検討もする必要が出てくる場合があり、計画よりも多大な作業を要する可能性がある。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度に得られた研究成果を基に、今年度は労使代表者が労働法案作成過程に参加する制度の運用状況をフランスの研究者にヒアリング調査し、実際の運用状況を踏まえたうえで、当該制度の意義を検討する。 また、労使関係法改正法案の内容を精査し、本研究目的に関連する部分を整理、分析する。
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Causes of Carryover |
フランスに出張して現地調査する予定であったが、パリで大規模テロが発生したため、安全性を考慮し出張をとりやめたことで、未使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度のフランス出張および必要文献の購入に、未使用額は充てることとしたい。
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