2016 Fiscal Year Research-status Report
フランスの労働政策決定時における労使交渉前置主義の意義と日本への示唆
Project/Area Number |
15K16941
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
小山 敬晴 早稲田大学, 法学学術院, その他(招聘研究員) (00633455)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 労使代表者の法案作成参加 / 労働組合の代表性 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、フランスにおける立法前の労使交渉前置主義がフランス憲法規定との関係でどのように位置づけられるのかについて重点を置いて研究を行った。平成27年度は、立法前労使交渉前置主義が法制化された2007年の法律を社会的・歴史的文脈において位置づけるための研究を行ったが、その研究の中で、本制度がフランス憲法に適合するものであるかが重要な問題であることが明らかになった。すなわち、フランス憲法第34条は、労働法の基本的原則については法律がこれを定めなければならないとしているところ、労使交渉の結果を法制化することは、立法権限を侵害し、憲法違反になるのではないかという問題がある。この問題について、労使交渉の結果につき、国会は審議を行い、修正権を有しているので、特段立法権を侵害することにはならず憲法違反ではない、と考えられている。しかしながら、その反面、立法府による修正を前提とすると、結局のところ立法前に労使交渉を前置したことの意義自体が問われるというディレンマを抱えることになる、ということが明らかになった。 なお、平成27年度の研究によって得られた知見をもとに、フランス本国においてヒアリングを行うことを本年度の研究の1つの目的としていたが、自身の所属機関の変更による引っ越し作業等の都合で、フランス現地に調査に行くことができなかったため、現地でのヒアリング調査は次年度に改めて行うこととしたい。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現地でのヒアリング調査を行うことができなかったという点で、すべて予定通り研究が進んでいるとはいえないものの、平成27年度は、労働立法時の労使交渉前置主義法制化の歴史的文脈を分析し、平成28年度は新たに浮上した問題である、当該制度の憲法適合性について分析を加えることができ、概ね研究計画に従って研究を進めることができているといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成27年度、平成28年度の研究成果を基に、最終年度は現地でのヒアリング調査を実施し、実際の法制度の運用状況を調査し、当該制度の意義を検討する。また、2016年8月5日の法律による労働法改革が本制度に与える影響の有無を検討する。
|
Causes of Carryover |
フランスでの現地調査を行うことができなかったため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
フランスでの現地調査のための旅費、および必要な文献の費用に充てる。
|