2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K16943
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
櫻庭 総 山口大学, 経済学部, 准教授 (80546193)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ヘイトスピーチ |
Outline of Annual Research Achievements |
ヘイトスピーチの類型化を試みるにあたって、まずは現行刑法下での犯罪類型との関係を整理した。その結果、当初予想していた(a)侮辱罪型、(b)扇動罪型、(c)その他の類型という三分類を更に細分化し、脅迫罪型および傷害罪型の類型を加えるとともに、それらに該当するヘイトスピーチはごく一部の例外にとどまり、やはり本質的なものは扇動罪型であることが確認できた。この研究成果を要約したものを、①櫻庭総「現在の刑事司法とヘイトスピーチ」法学セミナー736号(2016年)24-29頁に公表した。 さらに、そこでの私見を他分野のヘイトスピーチ規制法研究者と議論した内容を、②櫻庭総・梶原健佑・中村英樹・奈須祐治・桧垣伸次「座談会 理論と政策の架橋に向けて」同47-56頁に公表した。この座談会を通じて、他分野の研究においてもヘイトスピーチの類型論が焦眉の課題の一つになっていることが確認でき、類型化の方法論についても、面前/非面前という区分など参考になるところが大きいものであった。 また、現在のヘイトスピーチの行為態様を分析するため、京都朝鮮学校襲撃事件の被害関係者の話を伺う機会があった。そこでは、ヘイトスピーチ規制のための実体法規定が仮にあったとしても、それを実効性あらしめるための手続法ないし刑罰論上の問題を検討する必要があることが判明した。そのため、それらについての論点整理を行い、刑罰論との関係については、③櫻庭総「禁止規定の担保措置として刑罰を規定すべきか」部落解放研究204号(2016年)170-194頁に公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヘイトスピーチの類型論を検討するにあたって、論点整理にあたる現行法下での分類とそれに応じたヘイトスピーチの可罰類型を検討し、論文として公表することができた。ドイツの文献については、論文の公表にはいたっていないが、収集・整理については進んでいる。また、類型論の区分を検討していくうえで、当初想定していなかった、手続上および刑罰論上の論点にも気づくことができ、それに関する論点整理も行い、一部は論文として公表することができた。 なお、当初はドイツへの渡航を計画していたが、EUにおけるテロ事件が発生したためしばらく様子を見ることにし、平成28年度あらためて渡航する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、これまで進めてきたドイツの学説の整理を論文として公表するとともに、ドイツ刑法130条の民衆扇動罪に関する判例を渉猟することで、扇動罪型ヘイトスピーチの具体的な行為態様およびその処罰範囲の限界を考察する予定である。
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Causes of Carryover |
当初はドイツへの渡航を計画していたが、ヨーロッパにおけるテロ事件などの発生をうけ、しばらく様子を見ることにした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度は、平成27年度に計画して実行できなかった日程分もあわせ、ドイツ渡航を行う。
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