2016 Fiscal Year Annual Research Report
Study on the concept of Dangerousness in the criminal law
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15K16945
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
佐藤 拓磨 慶應義塾大学, 法学部(三田), 教授 (10439226)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 刑法 / 未遂犯 / 危険犯 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、昨年度に進めた未遂犯に関する研究の精度を高め、1冊の単著の研究書にまとめた。同書は、『未遂犯と実行の着手』というタイトルで、2016年10月に、慶應義塾大学出版会から出版された。同書では、未遂犯と具体的危険犯を同視する現在の通説を批判し、未遂犯固有の性格を強調する立場から、未遂犯に関する各論点(未遂犯の処罰根拠、実行の着手時期、実行の着手時期の判断における行為者主観の役割、間接正犯の実行の着手時期)について、理論的一貫性のある独自の解決案を提示した。独自の未遂犯構想を本格的に展開した研究は、近年はあまりみられなかったことから、同書は今後の学界の発展に一定の寄与しうるものだと考えている。 また、本年2月には、ドイツの刑事法専門雑誌であるGoltdammers' Archiv fuer Strafrechtに、「日本の未遂犯論の展開(Entwicklung der japanischen Versuchsdogmatik)」という論文を投稿した。同論文は、同誌2017年8月号の「日本刑法特集」の中の1本として掲載されることが決定している。同論文の主たる目的は日本の未遂犯論の現状を紹介することにあるが、私見のダイジェストも含まれており、研究成果の対外発信という意味でも、一定の成果が得られたと考えている。 他方、具体的危険犯における危険概念の研究に関しては、その総説部分に関する研究成果を前掲書『未遂犯と実行の着手』第1章に反映させることができたが、具体的危険犯に分類される各犯罪類型ごとの各論的研究にまでは手が届かなかった。今後の課題とせざるを得ない。 積み残しの課題はあるものの、研究期間全体を通じ、当初予定していた研究計画の大部分は完遂できたと考えている。
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