2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K16950
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
石綿 はる美 東北大学, 法学研究科, 准教授 (10547821)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 民法 / 相続 / 所有権 / 譲渡制限 / フランス民法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、財の譲渡人が、譲受人である新たな所有権者に対して、財産の処分権の行使を制限するような義務を課すことができるのか、そのような義務を課すことができるとしても、何らかの限界が存在するのではないかという問について、検討することである。 平成29年度は、フランス民法の研究を中心に、フランスにおいて、遺言によって遺言者がどのような義務を受遺者に課すことができるかという点について、文献調査を中心に研究を行った。フランスにおいては、2006年の民法改正で、段階的恵与という制度が認められ、遺言者は、受遺者に対して、遺贈する財産の処分を禁止する義務等を課すことができるとされている。そこで、段階的恵与において、どのような場合に受遺者に対して義務を課すことができるのかという点を中心に検討を行った。具体的には、遺言者が、第一の受遺者に次いで、第二の受遺者に財産を承継させることを望んでいる場合、第一の受遺者に終身での財産の譲渡禁止義務を課し、第一の受遺者の処分権の行使を制限することが認められている。フランスにおいては2006年改正から10年経過したことから、段階的恵与が実際にどのような場面において利用されているのかという点についても調査を行った。また、フランスでは2006年に段階的恵与が認められるまでは、家産の移転目的で受遺者に財産の譲渡禁止義務を課し、その処分権を制限することは極めて例外的な場合にのみ認められていた。そのため、フランス民法典制定から2006年民法改正までの議論についても、文献調査を行った。 日本においても相続法改正が行われ、その議論の中で、遺言において何が行われるか明確にするべきだという見解も見られた。本研究は、遺言において受遺者にどのような義務を課すことができるかという点について、日本法への示唆を与えるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では、平成29年度はドイツの相続法及び物権法研究を行う予定であったが、フランスの文献が膨大であることなどもあり、文献調査がフランス中心になってしまっている。しかしながら、フランス法調査については、フランスの研究者との意見交換を行うこともでき、順調に進行しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、研究最終年度であることから、比較法研究のまとめを行うと同時に、日本法の研究も行う。 比較法研究については、フランス法についての調査を完了し、またドイツ法についても特に相続を中心に研究を行うこととする。 日本法については、従来の学説の議論を調査するとともに、日本の相続法改正に関する議論についても調査を行う。日本においては、相続法の改正が行われ、そのための法制審議会の審議の中では、本研究と問題意識を同じくする、遺言においてどのような処分をすることができるか、より詳細には、遺言において受遺者にどのような義務を課すことができるかという点についての議論が存在することから、それらの議論も検討し、研究の総括を行うこととする。
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Causes of Carryover |
(理由)研究計画の提出時には、フランスに渡航したうえでの文献調査・インタビュー調査を予定し、そのための渡航費用を計上していた。しかしながら、平成29年度は、研究代表者が、在外研究のためフランスに滞在中であったことから、渡航費用が生じなかったことから、次年度使用額が発生した。 (使用計画)平成30年度においては、文献購入、国内出張、海外学会への参加等のために、費用を利用予定である。
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Research Products
(3 results)