2015 Fiscal Year Research-status Report
フランスにおける「会社の利益」概念の意義―もう一つの会社契約理論―
Project/Area Number |
15K16960
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
石川 真衣 早稲田大学, 法学学術院, 助手 (00734740)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | フランス会社法 / 会社の利益 / 株式会社法制史 |
Outline of Annual Research Achievements |
2015年度は、フランスにおける会社の利益概念の意義を明らかにするために、会社の利益概念が生まれる基礎となった株式会社形態の発展過程に着目することにした。2015年度は、19世紀から20世紀初期までの株式会社法制に関する検討を中心に、研究を進めた。この検討を通じて、フランス国内での議論の展開に限らず、フランスが周辺国(特にフランス語圏)の株式会社法制に与えた影響についての理解を深めることができた。これにより、フランスに限らずその周辺国における理論状況もあわせて明らかになり、今後検討されるべき課題が見出された。ここで見出された課題には、2016年度に取り組むこととする。
2015年度になされた重要な改正としては、2015年9月15日のオルドナンスにより、株式会社に関して19世紀以降必要とされていた株主最低7名による設立を一部放棄し(商法典L225-1条)、上場がなされない場合には株主数2名で設立を行うことができることとなった点が挙げられる。これは同族企業・中小企業の需要に応えるものであると同時に、グループ会社法制(100%子会社を有する親会社の存在)への対応ともなる。このオルドナンスの目的は、株式会社形態の採用を促進させることにあり、その理由は株式会社形態の方が略式株式会社形態に比べて社員保護の面において優れていることにあるとされている。
なお、会社の利益概念と密接に関係するコーポレートガバナンスの議論を取り上げるため、2013年になされたコーポレートガバナンス・コードに関する見直しを検討した研究ノートを2015年12月に発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の進捗はおおむね順調である。 19世紀のフランスにおける株式会社法制の形成に関しては、当初の予想以上の情報・結果を得ることができた。
2015年度は研究成果を一件公表した。 石川真衣「<研究ノート>フランスにおけるコーポレートガバナンス・コードの見直しに関する覚書」早稲田法学91巻1号37頁以下(2015)
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Strategy for Future Research Activity |
2015年度に行った研究を基礎に、2016年度は会社の利益が問題となる実際の場面を個別に取り上げて検討を行う。判例の検討を中心に研究を進めていく予定である。
また、19世紀末以降については経済データが豊富になり入手もしやすくなるため、これらをあわせて活用していきたい。
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