2016 Fiscal Year Research-status Report
フランスにおける「会社の利益」概念の意義―もう一つの会社契約理論―
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15K16960
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
石川 真衣 早稲田大学, 法学学術院, 助手 (00734740)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 株式会社法 / フランス会社法 / コーポレートガバナンス / コーポレートガバナンス・コード / 契約理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、前年度の研究で得られた成果を基礎に、会社の利益概念が問題となる実際の場面を個別に取り上げて検討を行った。 今年度取り上げたのは、株主の締出しをめぐる問題及び株主権の濫用をめぐる問題である。 ① 株主の締出しをめぐる問題:伝統的な会社契約理論との関係で、株主を会社から締め出すことがどのように説明されるのかを19世紀以降の学説・判例の検討を通じて明らかにした。その際に、わが国に存在する締出しを目的として利用される制度にも言及し、わが国の理論状況とフランスの理論状況の比較を行うことを意識した。また、直接的な締出し方法だけでなく、結果として締出しをもたらすような間接的な締出し方法の利用可能性についても検討を行った。 ② 株主権の濫用をめぐる問題:すでにわが国でも先行研究がある多数派の濫用及び少数派の濫用に関する判例の展開を確認したうえで、会社契約理論と濫用法理の関係性について考察を加えた。 また、上記の検討とは別個に、2015年度に公表したフランスのコーポレートガバナンス・コードについての研究(2015年度成果「<研究ノート>フランスにおけるコーポレートガバナンス・コードの見直しについての覚書」早稲田法学91巻1号(2015))を継続して行い、2016年11月の改訂の内容及びコーポレートガバナンス・コードをめぐる動向について情報のアップデートを行った。その内容については、2016年度中(2017年3月18日)に所属機関において主催されたシンポジウムにおいて報告の機会を得ている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
会社の利益に言及する株式会社に関する判例については主要なものを含め、ほぼ目を通すことができた。ただし、株式会社以外の会社形態が場面となる判例についてはすべて整理し終えていない。この作業は次年度の課題とする。 会社の利益に関する問題を検討するうえで、株式会社の締出しに関する問題と濫用に関する問題の整理を一定の段階まで行うことができたことは大きな進展であると考えている。 しかし、フランスにおける会社契約理論を考えるうえで、会社契約者として想定されているのがどのような者であるのかについてはまだ十分な検討を行うことができていない。この作業を2017年度に集中して行いたい。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究成果を2017年度中に公表するための準備を行う。 会社の利益概念に言及する、株式会社以外の会社形態に関する判例の検討を行い、会社の利益の意味が会社形態によってどのように変化するのかを明らかにすることを予定している。 2017年度が研究の最終段階となることを踏まえて、フランスにおける「会社の利益」概念の意義を明らかにするうえで総括的な研究を行うことを目標としている。 2016年度中に入手することができなかった文献については、継続して収集作業を行う。 また、必要に応じて、聞き取り調査を行いたい。
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Causes of Carryover |
年度内に注文した書籍(1冊)の請求書が送り元のミスにより科研費の請求書処理期限内に届かなかったことが理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は、書籍の購入に充てる予定である。
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