2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K16961
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
青木 仁美 早稲田大学, 高等研究所, 助教 (80612291)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 民法 / 成年者保護制度 / 成年後見制度 / ドイツ法 / オーストリア法 / スイス法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日本の成年者保護が成年後見制度を中心に実施されていることにより、本人の決定能力・行為能力が画一的に制限されている現状を問題点とし、成年者保護の法制度の多様化を図ることによって、本問題の解決を試みるものである。本研究の比較対象国は、ドイツ、オーストリアおよびスイスである。同3か国は、民法に成年後見制度は他の援助で本人の保護が可能である場合には、利用できないという内容の補充性原則に関する規定を置いている。平成27年度の研究目的は、同条文が3か国の判例においてどのように解釈されているかを明らかにすることによって、他の制度による成年者保護の有効性、および成年後見制度がそれでも必要とされる範囲を明らかにすることであった。さらに、成年後見制度以外の制度の利用を促進するために行われる活動が補充性原則の実現に対していかなる効果を与えているかを明らかにするかも、本年度の研究目的であった。 このような目的のもとに、研究代表者は、ドイツ、オーストリアおよびスイスの民法に規定されている成年後見制度の補充性原則に関する条文内容およびそれに関する判例の検討を行った。その結果、すべての国において、補充性の原則は判例において個別ケースに合わせて詳細に検討されており、成年後見制度の利用を減少するために有効に機能していることが判明した。とりわけ、身上監護面に関しては、他の援助が存在することを理由に成年後見制度の利用が許可されない場合が多かった。これに対して、財産管理に関しては、成年後見制度を利用する場合が多い。さらに、近年設立されている近親者代理権、任意後見制度による、成年後見制度利用の減少が見受けられた。研究代表者は、当該研究結果を論文にまとめ、「成年後見制度における補充性原則の機能」(早稲田大学高等研究所紀要第8号、2016年3月、5-25頁)に公表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度の研究計画は、成年後見制度の補充性原則が判例によってどのように解釈されているか、また近年設立されている他の成年者保護制度が成年後見制度の利用の減少に対して効果的かどうかを示すことが目的であった。これに関する論文を公表することができたため、研究計画はおおむね順調に進行している。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、オーストリアの患者代弁人制度の解明を研究目標とする。患者代弁人制度は、ドイツおよびスイスには存在しない。患者代弁人は、精神的障害を有する者に対して精神病院への措置入院が実施される際に、法律によって自動的に患者の代理人となる「法定代理人」である。患者代弁人の任命によって、患者の行為能力は制限されることはない。このため、患者代弁人制度が有効に機能すれば、成年後見制度の利用が不要となり、本人の行為能力の制限が生じないという効果が生じる。その結果、不必要な行為能力制限を伴わない、判断能力不十分者の保護の多様化を示すことができると考える。
|
Causes of Carryover |
ドイツ、オーストリアおよびスイスにおける現地調査の実施を平成28年度以降に変更したため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度から30年度間における、ドイツ、オーストリアおよびスイスにおける現地調査または学会参加によって使用する。
|