2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K16961
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
青木 仁美 早稲田大学, 高等研究所, その他(招聘研究員) (80612291)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 成年者保護制度 / 成年後見制度 / 措置入院 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、日本の成年者保護が成年後見制度を中心に行われていることにより、本人の決定能力、行為能力が画一的かつ自動的に制限されている現状を問題とし、成年者保護の法制度の多様化を図るものである。今年度は、本目的をもとに、成年後見制度以外の成年者保護制度にはどのような制度があり、本人に対する法的制限の弱い制度内容でどこまで本人保護を実現できるのか、成年後見制度が必要となる場合はいかなる場合かという観点から、オーストリアの患者代弁人制度を検討した。 結果として、患者代弁人制度は措置入院における本人の保護を迅速に実施するために設立された制度であり、成年後見制度の利用を回避することに有益である旨を述べた判例、学説は存在しなかった。また、判例においては、患者代弁人の代理権が措置入院に直接関係あるものでなければならないと明言されており、年金、賃貸借に関しては、成年後見人の任命が必要となっていた。その反面、制度の目的が明確であることから、閉鎖的空間において自由制限を受ける者の保護に際しては、患者代弁人制度が成年後見制度に優先して用いられていた。さらに、複数の判例が、患者代弁人の任命は、本人の行為能力制限を生じさせないことも明言していた。以上から、成年者保護制度が具体的かつ明確な目的を有する場合には、成年後見制度以外の成年者保護制度も、本人に対する過剰な制限を生じさせずに保護を実現しうるといえる。今年度の研究結果は、成年後見制度を維持しつつ、成年者保護法制を多様化し、本人の保護方法に幅をもたせることは本人への過大な保護を回避する効果を有することを示す意義を有すると考える。成果は、論文「措置入院における法定代理人が示す成年者保護の多様化の必要性-オーストリア患者代弁人制度からの示唆-」として早稲田大学高等研究所10号(2018年、5-21頁)に公表している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
出産・育児のために中断していた平成28年度の研究課題を、平成29年度に遂行した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究結果をもとに、オーストリアにおいて現地調査を実施する。
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Causes of Carryover |
(理由)育児と平行して研究を行ったため、研究にやや遅れが生じた。
(使用計画)本年度に予定した現地調査(オーストリア)を実施する。
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