2015 Fiscal Year Research-status Report
第三者を通じた議決権行使方法と決議の瑕疵に関する比較法研究
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15K16966
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Research Institution | Osaka University of Economics |
Principal Investigator |
藤嶋 肇 大阪経済大学, 経営学部, 准教授 (70368124)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 株主総会 / 議決権 / 代理行使 / 代理人資格 / 定款自治 / 決議の瑕疵 / ドイツ株式法 / ドイツ有限会社法 |
Outline of Annual Research Achievements |
当年度においては、日本及びドイツにおける株主総会での第三者を通じた議決権行使制度および、その制限の沿革に関する資料を収集し、概要を把握することに努めた。ドイツにおける近時の状況について、株式会社に関してかつては代理人資格制限を許す見解が支配的であったが、近時は否定説が有力に主張されている。この度、下級審で再び定款による代理人資格の制限につき否定する決定が下されたところ、さらに連邦通常裁判所は定款による代理人資格の制限を定める株主総会決議の瑕疵がすでに治癒されている場合には、株主からの無効の申し立てを認めないという判断を示した。ドイツのこのような判断に背後にはEUの経済政策の下、株主の権利に関する統一的なルールを国内法に移入しつつあることが考えられる。あらためて制限否定説の論理を再検討するとともに、仮に制限が否定された場合に現在の定款の効力を維持し法的安定性を確保する方策につき検討した。日本においても、株主の代理人資格制限に関する定めは定款におかれる。日本において広く行われている上述の制限に関し、ドイツを参照して直ちに定款自治の範囲を超えるとまではいえないとしても、今後、より好ましい企業統治確保のためになお検討する必要があるであろう。その場合、今回の連邦通常裁判所が示したような、異議申し立て権者の制限等による法的安定性維持の方策もまた必要と考えられる。以上の成果は「ドイツにおける議決権代理人資格制限に関する議論の展開―ヨーロッパ株主権利指針導入後の状況―」と題する論稿において示される予定である(平成28年度中刊行予定)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当年度は、日本における議決権代理人資格制限に関する研究、ドイツにおける議決権代理人資格制限に関する研究を進めた。日本におけるものよりドイツにおけるものの研究が先行して進捗した。文献研究はおおむね予定よりも進捗している。一方で、予定していたヒアリング調査はなおその具体的内容に付き検討を必要とし、当年度計画通りには進捗しなかった。引き続き次年度以降の実施を計画する。以上より、おおむね順調に進展しているものといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
当年度はドイツにおける議決権代理人資格制限に関する研究が先行した。次年度は日本に関する研究をさらに進行させるとともに、ドイツに関する研究もさらに進行させる。3年目に予定されている決議の瑕疵に関する研究の一部は当年度に行われたが、それも可能な限り前倒して進捗させる。ヒアリング等の調査は、十分な準備をしつつその実施可能性を慎重に検討したい。
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Causes of Carryover |
当年度、2年目に実施する計画であったドイツ株式法に関する研究が進捗したため、予定を前倒しして文献を調達する必要が生じ、前倒し請求を行った。概算で前倒し請求を行ったため、残額は実際に使用した額との間に生じた誤差である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
前倒し請求したものはそもそも2年目に使用が予定されていたものであり、2年目の研究計画遂行のために使用することを計画している。
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