2017 Fiscal Year Research-status Report
第三者を通じた議決権行使方法と決議の瑕疵に関する比較法研究
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15K16966
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Research Institution | Osaka University of Economics |
Principal Investigator |
藤嶋 肇 大阪経済大学, 経営学部, 准教授 (70368124)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 株主総会 / 議決権 / 代理行使 / 代理人資格 / 定款自治 / 決議の瑕疵 / ドイツ株式法 / ドイツ有限会社法 |
Outline of Annual Research Achievements |
当年度においては、日本およびドイツにおける株主総会での第三者を通じた議決権行使制度およびその制限に関する概要を把握することに引き続き努めた。日本における東京地裁平成28年12月15日判決が、株主総会の進行に際して株主権の侵害があったか否かについて争われたものであるが、広い意義での株主総会決議の手続に関するものであって本研究課題との関係があるとして検討した。株主総会の実質化の必要性とその弊害の回避のバランスが問題となると考える。さらに、否決された株主総会決議の積極的決議確認の訴えに関し、ドイツ株式法上の議論を参考にして検討した。株主総会決議の瑕疵を争う方法として、日本法上株主総会決議不存在・無効・取消しの訴えがある。以上の訴えの効果はいずれも生じた決議の効力の存しないことを確定することに向けられている。そこで、不正によって決議が不成立・否決された場合、株主の救済策はいかにあるべきか問題となる。決議の効力が認められなかった場合、たとえそれを不存在・無効・取消しとして効力を否定したとしても、株主の救済にいたらない。株主の救済のためには瑕疵ある決議を取り除くだけでは足りず、「ありうべき決議」の効力を認める必要があるが、そのような効力を認める解釈はいかにあるべきか。以上の問題について、ドイツ株式法の解釈上許容されている積極的決議確認の訴え(Die positive Beschlussfeststellungsklage)を参照し、その法的性質、要件、効果を検討した。法的保護の必要性についてドイツ法上の判例を検討し類型化を試みた。引き続き日本法上の保護の可能性を検討し、仮に積極的決議確認が認められるとしても保護される株主の範囲はそれほど広範なものにならないと考えられるが、保護することの許容性は満たされると解される。以上の研究内容は今後公表予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当年度は日本における議決権代理人資格制限に関する研究、ドイツにおける議決権代理人資格制限に関する研究、不存在の決議、瑕疵ある否決の決議の瑕疵と「あるべき決議」の効力を認める解釈についての研究を進めた。当年度は④否決決議を対象とする決議取消の訴えの可否とその効力に関しドイツ株式法、有限会社法に関する文献研究が進捗した。予定されているヒアリング調査については、その調査目的、目的達成のための手法も含めて、なお具体的内容につき検討を必要とし、計画通りに進捗しなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
当年度は研究目的④「瑕疵ある否決決議の取消可能性とその効力に関し、否決された決議の生成過程に着目した解釈を得る」の研究につき、日本法、ドイツ法上の研究が進捗した。次年度は、研究目的①②③につき、研究を推進する。さらに、予定されているヒアリング調査については、その調査目的、目的達成のための手法も含めて、なお実施可能性を慎重に検討したい。
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Causes of Carryover |
(理由)当年度の研究は、過年度に請求を行った経費を用いて計画を遂行した。当年度は、必要な文献の取得、予定されているヒアリング調査について、その調査目的、目的達成のための手法も含めて、なお具体的内容につき検討を必要とし、計画通りに進捗しなかったため、物品費、旅費相当額が次年度使用額となった。 (使用計画)次年度は、研究目的①②③につき、さらに研究を推進する。さらに、予定されているヒアリング調査については、その調査目的、目的達成のための手法も含めて、なお実施可能性を慎重に検討したい。次年度使用額は以上の研究遂行のための文献調達、旅費に使用する。
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