2015 Fiscal Year Research-status Report
実効的なDV被害者支援につながる加害者対策に関する比較研究
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15K16974
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Research Institution | Kansai University of Welfare Sciences |
Principal Investigator |
松村 歌子 関西福祉科学大学, 健康福祉学部, 講師 (60434875)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ドメスティック・バイオレンス / 加害者プログラム / ソーシャルワーカー / DV防止法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、実効的なDV被害者支援につながる加害者対策のあり方や加害者への働きかけについて検討することを目的としている。 日本のDV防止法は、被害者支援に一定の成果を上げつつも、制度設計においてDV問題の本質及びDV加害者・被害者の心理・行動に適合的でない部分がある。DV防止法はあくまでも「配偶者等からの暴力の防止」と「被害者の保護」であり、「暴力の禁止」や「加害者の処罰や更生」を定める法律ではないからである。これからの被害者支援は、支援の「両輪」として加害者対策にも目を向ける必要がある。加害者への適切な働きかけこそが、長期的な目で見れば、被害者支援に資するからである。 平成27年度においては、関連する研究会や学会に積極的に参加し、国内の民間支援団体や自治体関係者から情報収集を行った。国内では、沖縄県においてダルクやがじゅまるなどによる活動について調査し、DV加害者が親密圏における暴力の加害者としての側面だけでなく、薬物依存や犯罪、貧困などその他の問題を多く抱えていることを学んだ。その他、国外では、台湾を訪問し、民間支援団体によるDV被害者支援や離婚・面会交流などの家事紛争への支援の様子、裁判所との連携のあり方について調査を行った。台湾では、女性・男性双方に対して裁判などの法的手続に関する情報提供及び親業トレーニング受講の働きかけをするなどしており、子どもを第一に考えた支援を官民が連携して提供していた。全ての地方裁判所に民間支援団体によるソーシャルワーカーが配置され、両当事者それぞれに公正な立場から担当がつき、これから行われる手続についての説明をし、本人の納得を得ることで、手続がスムーズに進展し、その後のトラブルが少ないとのことであった。台湾における民間団体との連携及びソーシャルワーカーの積極的活用は近年始まった制度であり、今後も調査を継続していきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は、当初予定していた以上の学会やシンポジウム・研究会に参加し、情報収集及び関連する研究者や支援者との交流を深め、意見交換を行うことができた。具体的な訪問先としては、沖縄県では、がじゅまる、ダルク、児童相談所、子どもシェルター設立の弁護士、女性センターなど、台湾では、女性支援団体、地方裁判所、大学関係者などに訪問することができた。 平成27年度は、日程調整の関係で、当初予定したアメリカやニュージーランドの調査はできなかったものの、台湾やマレーシアなどアジアのDV被害者支援についての調査を行うことができたため、これからの日本の被害者支援のあり方を検討する上で有用であったといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度も引き続き、関連する学会やシンポジウム・研究会に参加し、情報収集及び関連する研究者や支援者との交流を深め、意見交換を行う等をして研究を進める。この調査研究を通じて得た知見は、日本女性学会、亜細亜女性法學研究所主催シンポジウム、シェルターシンポジウム、ジェンダー法学会などの場で報告する予定である。 平成28年度も諸外国の動向を調査できるよう、日程調整及び訪問先調整を行っていきたい。
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Causes of Carryover |
平成27年度は、本務校での勤務の関係及び他の調査日程との関係で、当初予定していたアメリカ・ニュージーランドの調査を日程調整の関係で実施できなかった。英米法圏の国々のDV被害者支援及び加害者プログラムに関する調査は平成28年度以降における実施をめざし、平成27年度未使用分は平成28年度分へ繰越しを行う。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度の長期休暇中に、イギリス・ニュージーランド・シンガポールなど、英米法系の国及びその影響を受けた国におけるDV被害者支援策及び女性・子どもの支援のあり方、被害者支援の一環としての加害者への働きかけのあり方を調査するため、訪問日程を調整し、調査を実施する。
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Research Products
(8 results)