2016 Fiscal Year Research-status Report
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15K16976
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Research Institution | Doshisha Women's College of Liberal Arts |
Principal Investigator |
尾玉 剛士 同志社女子大学, 現代社会学部, 助教 (60751873)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 医療保険 / 比較政治 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は主として公的医療保険による医師に対する統制が強い国と弱い国が存在する原因の解明に取り組んだ。公的な医療保険制度の発達を経験した先進諸国のなかには、日本やドイツのように公的医療保険による医師に対する統制が相対的に強い国と、アメリカやフランスのように公的医療保険による医師に対する統制が相対的に弱い国が見られる(国内にも医療機関による差異がある)。こうした国際的な分岐が生じたメカニズムを明らかにする上で、本研究では、医師が公的医療保険制度による診療や報酬に対する統制に必ず反対すると想定する立場をとらず、各国の医師が公的医療保険制度に対してどのような選好を形成していったのかを経験的に明らかにすることを目指している。 そこでまず、日本、フランス、ドイツ、イギリス、アメリカといった国々の医師と医療保険に関する先行研究を検討し、医師同士の市場競争に否定的で公的医療保障の給付を重視する平等志向の医師組織と、医師同士の競争・格差に肯定的で公的医療保障の給付を軽視する医師組織の2パターンを識別した。その上で、前者の例としての日本の医師組織と後者の例としてのフランスの医師組織について、19世紀後半以降の医師組織の形成期から、第二次世界大戦後の公的医療保険の完成期にかけての時期に、医師組織が公的医療保険制度に対してとった姿勢に着目して、資料収集と分析を行った。こうした分析を通じて、日本医師会が公的医療保険制度による統制を受容し、フランスの医師組合が統制回避に努めてきたプロセスの解明を進めることができた。 また、公的医療保険制度の設計が国によって職域保険型・地域保険型・折衷型といった異なる形態をとった原因の解明にも着手し、フランスの職域型医療保険、日本の折衷型医療保険の成立過程について資料収集と分析に取り組んだ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に基づき、日本とフランスの歴史研究とその他の国々をも視野に入れた分析枠組みの構築について前進することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は概ね当初の予定通りに研究を進めることができたが、成果報告の機会が小規模な研究会に限られてしまった。次年度においては論文の投稿や学会発表の形で成果を公表しフィードバックを得ていきたい。
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Causes of Carryover |
所属研究機関の備品が充実しており、予定よりも物品費の使用を抑制できたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度には所属機関が変わるため、必要が生じた備品を購入する予定である。
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