2016 Fiscal Year Research-status Report
人口減少時代の大都市における地域住民協議会の比較研究―人材育成機能に注目して
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15K16982
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
三浦 哲司 名古屋市立大学, 大学院人間文化研究科, 准教授 (10624314)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 地域住民協議会 / 区民会議 / コミュニティ・ガバナンス / 地域自治 / 人材育成 / 名古屋市 / 大阪市 / トリノ市 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度の研究成果は、主にふたつがあげられる。第一は、大都市における地域住民協議会に関する単著論文(三浦哲司「日本社区治理中的居民参与和協働:現状与問題」趙秀玲編『中国基層治理発展報告(2016)』广東人民出版、2016年)と共著論文(森徹、諏訪一夫、赤木博文、三浦哲司「名古屋市における大都市制度のあり方」『国際地域経済研究』第17号、2016年)の公表である。このうち、前者に関しては、日本の地域住民協議会が多様な独自事業を展開できている要因を明らかにした内容で、本研究を通じて海外の学術雑誌に掲載した研究成果である。また、将来的な日本と中国との大都市における地域住民協議会の比較研究にとって足がかりとなる。 第二は、大都市におけるコミュニティ・ガバナンスの最新動向に関する国際シンポジウムでの報告である(「日中コミュニティ・ガバナンスの制度と実践」主催:同志社大学政策学部・大学院総合政策科学研究科、共催:北京大学政府管理学院)。このなかで、「日本のコミュニティ・ガバナンスにおける住民参加の現状と課題」というテーマで報告し、平成28年度の調査結果を交えながら、日本の地域住民協議会の最新動向について整理・報告を行なった。国際比較の視点から、地域住民協議会を例にして重層的なコミュニティ・ガバナンスのあり方を検討した点に、本報告の意義が求められる。 平成28年度は、大阪市と名古屋市を中心とする地域住民協議会の現場において、職員へのインタビュー、住民との意見交換、本研究に関連するテーマを扱う研究者との意見交換など、さまざまな調査を実施してきた。また、上記のとおり海外の研究者との交流も進めることができた。これらを基盤にして、引き続き学術論文の執筆、および研究成果の発表を継続したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画調書では、平成28年度にトリノ市の調査を実施する予定であった。その後、平成28年6月のトリノ市長選挙によって新市長が就任し、地区住民評議会への対応を見直すうごきが生じた。そのため、流動的な状況での調査は避け、平成28年度中のトリノ市での調査は見送っている。結果として、平成28年度は大阪市と名古屋市の調査を重点的に行ないつつ、トリノ市での最新情報の把握につとめた。 もっとも、トリノ市における地区住民評議会への新市長の対応もしだいに明らかになってきており、さらに地区そのものの合区も行なわれた変化もあって、結果として本研究には興味深い動向が生じたといえる。全体的なスケジュールからは逸脱しているわけではないので、引き続き調査および執筆を進め、学術論文として投稿するとともに、学会報告の機会を見つけて積極的に研究成果を報告したい。 ちなみに、本研究課題と関連して、名古屋市が主催する公開シンポジウムで講演講師やパネルディスカッションのコーディネーターなどをつとめた(「中区の特性を活かしたまちづくり」主催:名古屋市中区、日時:平成28年10月2日、場所:名古屋市中区民ホール)。また、平成28年度から名古屋市の各行政区でスタートした区民会議について、昭和区と中区でアドバイザーをつとめ、講演なども担当した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度に関しては、前年度に実施できなかったトリノ市での調査を進める予定である。そのため、現地の研究者や住民とはあらかじめ緊密に連絡を取り合って状況把握を行なうと同時に、トリノ市での現地調査の準備に取り組みたい。また、これまでと同様に、以前から参加しており、研究計画調書にも記載した研究会(地域自治区研究プロジェクト、大阪市政研究会、自治政策研究会)でも報告し、そこでの議論をふまえて研究全体の体系化にも取り掛かりたい。 すでに調査を進めた大阪市および名古屋市の調査結果は、早急に整理・考察を加えて学術論文としてまとめ、学術雑誌または大学紀要に投稿していく。同時に、学会報告への応募も進め、論文としてまとめた内容を学会報告というかたちでも公表したい。トリノ市の調査の結果も同様に学術論文にまとめ、広く公表していく。そのうえで、平成29年度は本研究の最終年度である点にかんがみ、年度の後半からは報告書の作成や学術書の出版も視野に入れながら、研究全体のまとめと体系化を進めていく予定である。 なお、上記では本研究課題と関連する公開シンポジウムへの登壇についても触れた。平成29年度においても同様に、本研究課題に関連する内容のシンポジウムには積極的に登壇し、こうした機会でも本研究課題による成果を広く社会に発信していきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
平成28年度中にイタリア・トリノ市の調査を実施する予定であったが、平成28年6月のトリノ市長選挙によって新市長が就任したため、トリノ市政が流動的な状況となった。そこで、平成28年度中のトリノ市調査を延期し、平成29年度に実施するかたちに変更した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
トリノ市政に関しては、新市長のものでの市政運営の状況がしだいに明らかになってきた。そこで、平成29年度中にトリノ市調査を実施し、市長交代による地区住民評議会への影響、また地区の合区のうごきなどの把握につとめ、学術論文の執筆に活かしていきたい。
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