2015 Fiscal Year Research-status Report
サラザール体制前半期の政治史的研究-立憲的権威主義から独裁への変容
Project/Area Number |
15K16986
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
武藤 祥 東海大学, 政治経済学部, 准教授 (40508363)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ポルトガル政治史 / 権威主義体制 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、申請者の従来の研究を継続させる形で、サラザール体制成立期の政治史的研究を行った。具体的には、英語・ポルトガル語を中心とした二次文献の渉猟作業を行い、第一共和政の崩壊(1926年)から軍政を経て、サラザールを長とする独裁体制が構築されていく過程の実証分析を行った。 とりわけ、「行政権(執行権)の強化」という、当時のヨーロッパ諸国が共通して直面した課題、およびポルトガルの軍が有していた共和主義への信念という状況の狭間にあって、サラザール体制の特質が生み出されていった、という知見を得た。大統領が国民の直接選挙で選出され、しかも大統領が(たとえ形式的にすぎないものであれ)首相であるサラザールの任免権を有するという体制の性質を、本研究では「立憲的独裁」と規定した。本研究の主眼はサラザール体制に関する実証的政治史研究であるが、「立憲的独裁」に関しては、近年比較政治学で活況を呈している「競争的権威主義」の議論とも関連させて、理論化することも考えている。 なお、本年度の成果を踏まえ、平成28年度には日本比較政治学会において、本研究の中間報告を行う予定である。 また、本研究の重要な柱である一次史料の渉猟・収集も継続的に実施した。9月にはリスボンのトーレ・ド・トンボ史料館において、1958年の大統領選挙に関する史料を収集した。また、国内においても東京大学法学部図書館に所蔵されているポルトガル政治史関連文献の渉猟を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は上述の通り、当初の計画通り概ね順調に研究が進んだ。ただ、年度内に2回(9月と3月)ポルトガルでの史料調査を行う予定であったが、3月の調査は実施できなかった。これは、平成28年度より研究代表者の勤務先が変更になり、転出の準備などにより時間を取ることが叶わなかったためである。 平成28年度は計画通り2度の海外調査を行うとともに、最終年度も(当初は年度内に1度の予定であったが)2度の調査を行うことで、当初の研究計画で想定していた史料収集の成果を担保できるようにしたい。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度はまず、上述の通り日本比較政治学会における報告(6月)を実りあるものにするべく万端の準備をする。 その後、国内外での史料調査を着実に実施した上で、1950年代のサラザール体制の変容を実証的に解明する作業に着手する。 最終的には、最終年度にかけて論文の形で成果をまとめることに注力したい。
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Causes of Carryover |
本年度は9月と3月にポルトガルでの史料調査を実施する予定であった。だが、研究代表者が2016年度より勤務先が変更となり、転出準備などのため3月の史料調査の実施を見送らざるを得なくなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2016年度は当初の計画通り、9月と3月に確実に史料調査を実行したい。また、1回あたりの滞在期間を長く設定することで、前年度に1度しか史料調査を行えなかった分をカバーするだけの渉猟を行う予定である。
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