2018 Fiscal Year Research-status Report
紛争後社会における民主化、国家建設による暴力発生:アジアの事例分析とモデル構築
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15K16990
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
田中 有佳子 (坂部有佳子) 青山学院大学, 国際政治経済学部, 助教 (50732715)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 紛争後社会 / 民主化 / 国家建設 / 暴力 / アチェ / 東ティモール / 国民統合 |
Outline of Annual Research Achievements |
本計画の目的は、紛争後社会における民主化と国家建設の作用が、どのように政治勢力が組織的転換を果たし、なぜ暴力を選択するかの因果メカニズムを精緻化することである。本来であれば、自由で公正な選挙の実施と国家の能力の構築は、いずれも紛争の非暴力化を目指す試みである。しかし、なぜ逆の効果、つまり暴力が生じるのかを明らかにすることが本計画の狙いである。より具体的には、本計画では、民主化、国家建設どちらも権力分掌過程の一部であると捉え、アクター間の対立が生じるメカニズムを示すものである。 これまで、インドネシア・アチェにおける事例分析を進めてきた。2005年の政府と武装組織GAM間の和平合意後、特別自治権を獲得したアチェ州内における地方選挙の実施が、GAM元兵士を含んで新たな暴力を生み出していることが分かった。なぜそのような暴力が存在するかを把握するため、現地協力者とともにGAM勢力が活動していた地域の住民を対象とし、調査票によるサーベイを実施した。 2018年度は、サーベイのデータを用いて2つのトピックについて共同研究者とともに進めた。第1のトピックは、紛争中の中央政府とアチェの人々の関係が紛争後のナショナル・アイデンティティ形成にどのような影響を与えるかである。第2は、紛争ならびに自然災害後に受けた公共サービスの内容が、GAM元兵士・関係者を含め人々の治安・安全状況の認識に与える影響である。 また、民主化と国家建設の作用が政治暴力に及ぼす影響を論じ、東ティモールの事例を主に検証した論文を改訂して学会発表を行った。そして書籍化に向けた加筆修正を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2つのトピックにつきデータ分析を進め、草稿を執筆し、分析結果を精査する段階となった。第1の研究はワークショップでの報告発表、学会での発表ののち、改訂を経て英文雑誌に論文を投稿する段階となった。第2の研究については、ワークショップでの報告発表を終え、確認・修正作業に入った。 また、本計画のトピックを扱った書籍については、該当する論文をもとに大幅な加筆修正をおこない、2019年公刊に向けて最終調整中である。
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Strategy for Future Research Activity |
第2のトピックの確認・修正作業と論文執筆を進め、7月に学会報告を行う予定である。場合によっては、現地での追加調査を行う。その後原稿を改訂し、英文雑誌に投稿することとしたい。
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Causes of Carryover |
第2のトピックの分析を推進させる必要があるため、現段階における分析成果をもとに確認・修正作業(場合によっては現地追加調査含む)、論文執筆にかかわる英文校正ならびに研究会・学会発表のための費用に用いる予定である。
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Remarks |
Y. Tanaka Sakabe & Y.Kubota, "Wartime Experience, Peace Dividend, and Security in Post-conflict Aceh," Workshop on Armed Conflict & Political Economy of Development, Shiga University, March 19, 2019.
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