2015 Fiscal Year Research-status Report
停戦の合意と維持における資源管理の有効性:理論と仮説検証
Project/Area Number |
15K16998
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小浜 祥子 北海道大学, 大学院公共政策学連携研究部, 准教授 (90595670)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 国際紛争 / 紛争管理 / 資源 / 国際情報交換 / アメリカ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究プロジェクトは、国家間戦争や内戦において第三国が紛争の早期終結および停戦の維持に対して効果的な介入を行うことができる条件を数理モデルに基づく理論から特定し、統計分析と事例研究を用いた厳密な仮説検証を行うことを目的としたものである。 そこで、平成27年度は、まず紛争一般や紛争解決、紛争における第三国の役割に関連する文献を幅広く収集し、それらの検討と整理を行った。加えて、紛争への介入者となることの多いアメリカの国内政治・外交に関する研究についても収集と検討を行った。 また、平成27年度はプロジェクトの初年度であり、今後の理論発展の方向性や可能性を広く探求するため、積極的に国内の関連する研究会に出席して紛争解決に関わる最近の研究動向を調査し、また様々な分野の研究者との意見交換を行った。特に、国内政治における「紛争」ないし利害対立とその解決についての研究やアメリカに関する研究から理論的・実証的な知見を得たことは新しい視点から国際政治における紛争解決を見直す点で収穫があった。 さらに、数理モデルによる理論部分を「Peace and Violence after Conflict: Does a Failing Settlement Call for Intervention?」として執筆し、国際学術誌への投稿を行った。そしてそこから得られたフィードバックをふまえモデルや論文の再修正を行った。同時に、理論の発展形としてKazuto Ohtsuki講師(カーネギーメロン大学)と紛争後の資源利用と紛争中の兵器使用に関する共同研究を行い、共著論文として国際学術誌への投稿を行った。これらの投稿にあたっては、英文校正を行い、整理作業のためのアルバイトも雇用した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画において、平成27年度は、第一に紛争解決と第三国の役割についての文献の整理を予定していた。その計画通り、紛争に関する文献、さらに紛争への介入者となることの多いアメリカに関する文献を収集し検討を行った。 第二の作業目標は、平成24年度から26年度にかけて実施した科研費・若手研究(B)『国際紛争における停戦後の平和構築と紛争後復興の分析:理論と仮説検証』において構築した数理モデルの結果をふまえ、第三国が紛争の早期終結・停戦の維持において果たしうる役割について理論の構築を行うことであった。平成27年度中には、先の若手研究(B)の成果である数理モデルを第三国の役割に焦点をあてる形で再構築し、国際学術誌への投稿を行った。そこで得られたフィードバックをモデルや論文の再修正へと生かした。ただし、このモデルの中では第三国の戦略的な意思決定については検討が不十分なままであったため、その点を平成28年度にさらに発展させる。 さらに理論の発展形として、先の若手研究(B)から継続してKazuto Ohtsuki講師(カーネギーメロン大学)と進めてきた紛争後の資源利用と紛争中の兵器使用に関する共同研究を「The Logic of Mass Destruction: A Political-Economic Approach」という論文として完成させ、国際学術誌への投稿を行った。 また本年度は紛争後の資源利用と第三国による資源管理についてのデータを収集することも作業計画の一部であった。ただ、本年度は理論部分の執筆と投稿および修正に優先的に取り組んでおり、それらの含意をふまえてデータ分析にあたる方が理論と実証分析の整合性を担保できるため、データセット構築は継続的課題とする。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、まず平成27年度からの継続的課題に早い段階で取り組む。一つは理論部分の論文の修正・再投稿で、平成28年度中の公刊を目指して作業を行う。また、第三国の役割を明示的に追加した理論の構築も並行して行う。もう一つは統計分析のためのデータ構築であり、理論の発展に即して作業を進める。この作業にあたっては当該分野の研究者からの助言を求めたり、アルバイトを雇用するなどして効率的に作業を行う。 また、当初の計画では平成28年度は主に統計分析と事例研究を行う予定であった。統計分析については先に述べた通り、まずデータの構築を行い、その上で分析へと進む。理論を発展させる中で新たに必要になる変数やデータが出てくることも予測されるため、データの収集と分析の双方に目配りしつつ柔軟に作業を進めていく。 事例研究についてはまず、平成24年度から26年度にかけて実施した科研若手(B)の成果である中国とヴェトナムに関する事例を本プロジェクトに引きつける形で修正し、公刊を目指す。また、アラブ・イスラエル間の紛争とアメリカによる和平交渉について、最新の研究の収集や資料の追加作業を行う。
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Causes of Carryover |
平成27年度の予算はほぼ計画通り使用したが、下記の通り、一部の研究計画を調整した結果として残額が生じた。平成27年度には理論に関する研究と論文執筆が想定していたよりも充実し、二本の論文を執筆することができた。そのため、投稿作業を前倒しし、優先的に行うこととした。 そこで、実証分析は理論部分の結果に大きく左右されるため、理論部分を洗練させた後にデータセット構築に取り組んだ方が結果として効率的に作業できると判断し、当初予定していたデータセットの構築を平成28年度以降の継続課題とすることにした。その結果、データセット構築のためのアルバイト雇用や図書の購入に充てる予定であった予算を平成28年度に使用することとした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度には、まず前年度の残額を使用してアルバイトを雇用し、また必要な図書などを購入して統計分析のためのデータセット構築を早い段階で行う。統計分析にあたってはさらにデータを収集する必要が出てくる可能性があるため、適宜アルバイトを雇用する。さらに、理論部分の論文についても再投稿作業を継続して行うため、英文校正や資料整理作業のための謝金も支出する。また、データの収集や分析、第三国を明示的に取り入れた数理モデルについて当該分野の研究者から助言を仰ぐため、国内外の学会・研究会に参加し、報告や意見交換を行ってフィードバックを得る。また、事例研究を充実させるため、事例に関する文献、史料を購入するほか、それらの整理に必要な物品やスキャナなどを購入する予定である。
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