2016 Fiscal Year Research-status Report
内戦における市民アイデンティティの形成と変容に関する比較研究
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15K17000
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Research Institution | University of Niigata Prefecture |
Principal Investigator |
窪田 悠一 新潟県立大学, 国際地域学部, 講師 (40710075)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 市民アイデンティティ / 内戦 / スリランカ / アチェ |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度中にはスリランカで実施した質問票調査に基づく論文を査読付き学術誌より刊行した。論文では、内戦中の反政府武装勢力(タミル・イーラム解放のトラ、LTTE)による領域統治・公共サービスの提供と内戦後の市民アイデンティティとの関係について考察した。
また当初の計画通り、インドネシア・アチェ州において質問票調査を実施した(当該年度の春から秋にかけて質問票の設計作業、調査地の選定、インタビュー対象者の抽出方法の確定、12月から1月の間に現地調査を実施)。スリランカの事例研究と同様に、調査では内戦後社会における市民のアイデンティティに焦点を当て、それを1)内戦中の市民の経験、また 2)反政府武装勢力(自由アチェ運動、GAM)による領域統治の側面から明らかにすることを試みた。これまでの研究では、内戦よって(特に敵対する集団から)身体的、もしくは財産所有物に対する直接的な損害を被った人々は、そうでない者に比べてより紛争後も強い民族ナショナリズムを持つ傾向があることが指摘されている。また、反政府武装勢力はしばしば自らの 支配地域において高度な行政システムを構築し、市民に対して保健、 教育、治安、司法、金融といった国家同様の公共サービスの提供行っていることが分かっている。これらはそうした勢力の支配地域を「疑似国家」化することで市民の中央政府に対する帰属意識を相対的に弱めていることが想定される。アチェ州では、当該地域に対するインドネシア中央政府の影響力が強かったものの、法制度の整備をはじめとした一定の統治がGAMによって行われていた。このような観点から内戦中の民軍関係に関する事例比較に向けたサーベイデータの収集を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、インドネシア・アチェ州における質問票調査を実施することができたため。また本研究課題の成果を論文として刊行することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度には、さらなる比較事例に関するデータ収集のため、ミンダナオ(フィリピン)での調査を実施する予定である。また、研究成果を国際研究学会などで報告しながら、本研究課題の全体成果の取りまとめを行うとともに実績報告書の提出やこれに基づく著書・論文の執筆準備に備える 。
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Causes of Carryover |
当該年度の所要額の残りが少額であったため、他の経費に充てることがことが難しかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究推進にあたり物品の購入が必要になることから、これに充当する予定である。
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Research Products
(8 results)