2017 Fiscal Year Annual Research Report
Comparative Study on Formation and Transformation of Civilian Identity in Civil War
Project/Area Number |
15K17000
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Research Institution | University of Niigata Prefecture |
Principal Investigator |
窪田 悠一 新潟県立大学, 国際地域学部, 講師 (40710075)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 内戦 / 市民アイデンティティ / スリランカ / インドネシア・アチェ州 / パキスタン・連邦直轄部族地域 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、内戦を通じた一般市民のアイデンティティの形成・変容に関する理論的考察及び実証分析を行うことを目的としている。特に、なぜ、ある内戦では市民の国家に対する帰属意識が希薄化し、民族などの政治社会集団に対するアイデンティティが強まる一方で、他の内戦事例ではこうしたアイデンティティの顕在化がみられないのかという問題を、1)内戦中の市民の経験 や2)反乱軍による領域統治の両側面から説明することを試みている 。この目的のため、スリランカ及びインドネシア・アチェ州において市民を対象とする質問票調査を実施してきた。
また上記の問題に関するデータ収集のため、最終年度にはパキスタン・連邦直轄部族地域(Federally Administered Tribal Areas, FATA)において400人規模の質問票調査を実施した(2017年6-7月)。当該調査からは多くの市民が一人一票制の導入や「辺境犯罪規則」の撤廃を望んでいることが分かった。FATAでは伝統的な部族地域独自のシステム「パシュトゥンワリ」に基づく自治が行われてきており、近代的な民主主義制度は統治原理として機能してきたわけではな かった。このような環境における市民の意識の変化の背景には、内戦中の民軍関係や中央政府機関との関係性の構築などがあると考えられる。調査終了後は収集されたデータに基づき、FATA市民の政治的アイデンティティと中央政府の政策に対する評価に関する論文を執筆した。本論文はいくつかの学会・研究会での報告後、学術誌に投稿する予定である。
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