2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K17007
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
今井 宏平 明治大学, 研究・知財戦略機構, 研究員 (70727130)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 非西洋の国際関係論 / トルコ / ホームグローン / ヨーロッパ中心主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究の初年度となる平成27年度は、研究の土台作りを重視し、トルコ、オーストラリア、アメリカで開かれた国際学会で発表と情報収集を実施した。 まず、6月17~19日にトルコの中東工科大学(Middle East Technical University、アンカラ)で開催されたThe 14th METU Conference on IRにおいて、What is the Particularity of Turkish IR: A Comparison with Japanese IR という題で研究発表を行った。報告では、トルコと日本の国際関係論の発展とその特徴を比較した。フロアからポストコロニアルの議論とも親和性があるというコメントをもらい、今後研究を進めていくうえで参考となった。 7月6日から9日にかけてオーストラリアのアデレードで開催されたThe International Convention of Asia Scholars 9(ICAS9)でも、How IR Major debates have effected to Western-Oriented Asian States -The cases of Turkey, Japan, and Australia-という題で発表を行った。報告では、国際関係の「4つの論争」を軸に、トルコ、日本、オーストラリアの国際関係論の比較を行った。同国際学会では東アジアにおける国際関係論の系譜と発展に関するパネルもあり、そこから多くのヒントを得た。 2016年3月16~19日に開催されたInternational Studies Associations(ISA)の年次大会では国際関係論の英国学派の視点からオスマン帝国を分析した、Re-emergence of ‘Pax-Ottomanica’? Turkish Perspective on ‘regional International Society’ and its Natureという報告を行った。 加えて、トルコ外交の分析枠組みの1つである地政学に見られる非西洋的側面を指摘した論文として、「トルコにおける地政学の展開―国家論と批判の狭間で―」を執筆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は、まず、トルコにおける国際関係論の受容と発展を概観することを目的とした。この目的は、3回の国際学会での研究発表を踏まえてほぼ達成された。トルコの国際関係論の受容と発展の特徴を浮き彫りにするため、同じ非西洋諸国に分類される日本、そして西洋との結びつきは強いが、国際関係論が独自に発展しているオーストラリアと比較した。その結果、トルコとオーストラリアは、批判理論やコンストラクティヴィズムという「第4の論争」の影響を強く受けているのに対し、日本は「第4の論争」よりも、リアリズムとリベラリズムの対立である「第1の論争」、方法論の問題を扱った「第2の論争」が依然として重視されていることが判明した。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目の研究に関しては、まず、1年目に扱ったトルコにおける国際関係論の受容と発展に関する論文の執筆を行いたい。次いで、非西洋諸国であるトルコについて、既存の西洋中心の国際関係理論でその対外行動を分析した際に生じる「ずれ」を抽出する作業を行いたい。初年度は非西洋諸国間の比較を行ったが、2年目には分析の「ずれ」をより良く理解するため、国際関係論の分析におけるケースとしてのトルコと西洋諸国の比較を試みる。加えて、トルコにおいて独自に発展してきた国際関係に関連する概念、思想はあるのか、あるとするとどのようなものか、という点についても考察していく。
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Causes of Carryover |
初年度はこれまで申請者が所有していた資料を中心に基礎的な作業を行った。そのため、文献・資料購入をあまり多く行わなかった。そのため、一部を次年度に繰越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2年目には、初年度の研究を経て、新たに必要とする文献・資料が生じたので、文献・資料代として使用する予定である。また、確定している香港での学会に加え、いくつかの学会に申請を予定しているので、そのための渡航費として使用する予定である。
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