2017 Fiscal Year Annual Research Report
Turkish Contributions to Developing Non-Western International Relations Theory
Project/Area Number |
15K17007
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Research Institution | Institute of Developing Economies, Japan External Trade Organization |
Principal Investigator |
今井 宏平 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, 地域研究センター中東研究グループ, 研究員 (70727130)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 非西洋の国際関係理論 / トルコ / 中東 / イスラーム / 西洋の国際関係理論 / 西洋中心主義 / ホームグローン |
Outline of Annual Research Achievements |
研究3年目の平成29年度は本研究の集大成として、単著『国際政治理論の射程と限界』(中央大学出版部)を刊行した。本書は国際関係理論の教科書、西洋中心の国際政治学に対するアンチテーゼの著書という2つの側面を持っている。まずは西洋中心の既存の国際関係理論を整理したうえで、国際関係理論がいまだにギリシャ・ローマの思想的影響を強く受け、ウェストファリア条約で決められた体制を基準としている点は、西洋中心主義の現れだとし、批判的した。そして、最後の3章―対外政策分析、歴史社会学、非西洋の国際関係路理論―で西洋中心主義からの脱却を目指す国際関係理論の道筋を示した。 また、足立研幾編著『セキュリティ・ガヴァナンス論の脱西欧化と再構築』で「第8章:シリア内戦において「消極的平和」を模索するトルコ」を分担執筆した。足立の編著は、これまでヨーロッパ諸国に適用されてきたセキュリティ・ガバナンスという概念を非西洋世界に適用し、そこでのインプリケーションを同概念に反映させ、同概念をより一般的なものとすることを目的としており、本研究課題と問題意識を共有している。同書では、主に非西洋諸国、もしくは途上国の文脈で論じられる「消極的平和」とセキュリティ・ガバナンスの関係について、シリア内戦に対応するトルコの事例を用いて論じた。 一方で本研究を実施したうえで課題として残ったのは、トルコの政治思想に立脚した、トルコ起源の国際関係理論についての具体的な成果を発表できなかったことであった。例えば、戦間期にトルコで起こったカドロ運動は、国際関係理論でいうところの従属論を先取りする思想・運動であり、これを国際関係理論の視点から再検討する計画は立てたが実施に至らなかった。この点は今後の研究課題としたい。・
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