2017 Fiscal Year Research-status Report
東北アジア地域秩序におけるサブリージョン協力の有効性に関する研究
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15K17010
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Research Institution | Soka University |
Principal Investigator |
中山 賢司 創価大学, 法学部, 准教授 (10632002)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | サブリージョン / 東北アジア |
Outline of Annual Research Achievements |
三年度目は、東北アジアの地方政府によるサブリージョナルな協力関係の実態を総体的に把握し、平和構築の観点からその機能を抽出するとともに、英語での発信に注力した。考察結果から見えてきたことは、東北アジアにおいても「並行外交(para-diplomacy)」と呼ばれる地方政府同士の越境的関係が増加し、次第に、組織化・制度化が進んでいる実態である。これにより、国境を超えたマルティプル・アイデンティティが、ローカル・レベルで醸成されつつあることを、実証的に浮き彫りにした。以上の成果は、日本・韓国・台湾の各大学が参加して沖縄で開催された国際シンポジウム“Peace Forum in Okinawa 2017”で報告し、英文出版に結び付けた(Nakayama, Kenji (2018) “Local Government Cooperation and Peace-Making in Northeast Asia: A “Sub-Regionalism” Perspective,”in Hideki Tamai (ed.) Building A Peace Community in Asia: Peace Forumin Okinawa, Soka University Peace Research Institute. (in press accepted manuscript))。 他方で、比較事例研究という観点から、メコン地域で進むサブリージョン協力(Greater Mekong Sub-region)にも着目し、越境交通分野での制度・インフラの進展と国境地域の変化に焦点を当てた考察を行い、英文出版に結び付けた(Sadotomo, Tetsu and Kenji Nakayama (2018) “Mekong Region and Changing Borders: A Focus on the CBTA and BCPs,”in Hidetoshi Taga and Seiichi Igarashi (eds.) The New International Relations of Sub-Regionalism: Asia and Europe, London: Routledge. (in press accepted manuscript))。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の目的は、サブリージョン協力の中で涵養される他者肯定型の規範性や市民性が、国家間で利害が対立する問題への有効なツールとなり得るのか、という点を考察することにある。当初、初年度に「領土の領有権問題(竹島/独島問題)」、二年度目に「越境環境汚染」という争点領域を取り上げ、考察する予定であった。初年度は予定通りに進んだが、二年度目は、欧州サブリージョンで登場してきた「スケール」概念の考察に思いのほか時間がかかってしまった。三年度目も、東北アジアにおけるサブリージョン協力の事例考察、また比較事例考察として取り組んだメコン地域のサブリージョン協力の実態把握に時間がかかってしまった。また、国際シンポジウムでの発表準備にも時間を費やさざるを得なかった。当初予定していた「越境環境汚染」に関しては、基礎研究に着手しているものの、「やや遅れている」状況にある。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、「越境環境汚染」という争点領域に焦点を当て、東北アジアにおけるサブリージョン協力の政治過程を考察する。越境環境汚染問題は、国家間の協力が不可欠な分野であるにもかかわらず、汚染発生源の特定や責任の追及などにより国家間の対立が顕在化するケースがある。だが他方で、ローカルなイニシアティブによる協力関係も観察できる。そうしたサブリージョナルな地方越境空間では、生活に密着した市民性が涵養され、国家間で利害が対立する問題を相対化する可能性をもつ。 以上の点を検証するため、北東アジア地域自治体連合(NEAR)、東アジア都市会議/東アジア経済交流推進機構(OEAED)、北東アジア国際交流・協力地方政府サミット、環日本海拠点都市会議という4つの自治体越境ネットワークを事例に、ローカル次元の環境協力をめぐる政治過程の比較事例考察を行う。現地調査としては、地方政府のほか、環境NGOや関連団体など様々なステークホルダーにもヒアリングを行い、各ネットワークの環境協力がステークホルダーに与えた影響や社会的認知度などを明らかにする。 考察の成果については、学会報告や学会誌・紀要などへの論文投稿などにより、広く公表する。
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Causes of Carryover |
(理由) 大学の授業・入試・広報などの公務により、一部の学会参加を見送らざるを得なくなったほか、現地調査の日程を確保できなかったため。 (使用計画) 次年度の現地調査を質量ともに一層充実したものとするほか、国際研究集会などの経費にも充当する。
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Research Products
(3 results)