2016 Fiscal Year Research-status Report
大気汚染物質としての水銀─アジアとグローバルのガバナンス間相互作用の研究
Project/Area Number |
15K17013
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Research Institution | Kumamoto Gakuen University |
Principal Investigator |
宮崎 麻美 熊本学園大学, 経済学部, 講師 (60579332)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 国際関係 / 国際政治 / 国際交渉 / 国際協力 / 環境 / 水銀に関する水俣条約 / 大気汚染 / アジア |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究目的は、水銀に関する水俣条約における大気交渉構造の解明である。とりわけ国際環境交渉過程における日本政府の役割に焦点を当て、今年度は関連する国際環境(大気)交渉の動きを追った。具体的には、ヨルダンでの水銀に関する水俣条約政府間交渉委員会(INC)会合やタイでの東アジア酸性雨モニタンリングネットワーク政府間会合に出席し、関係国の交渉状況を観察する参与観察を実施した。国内では、水俣条約国際交渉や国際協力に携わった、あるいは携わっている政府関係者への聞き取り調査を実施し、関係する資料を収集した。 日本政府の水俣条約交渉時における役割の一部は、国際関係理論で言われる、国際交渉の中での信条、また、環境哲学・環境思想分野における正義に基づく行動としても理解される。そのため、イギリス国際政治学会(BISA)2016年次大会にて、越境大気汚染に関する協力枠組みと水銀条約における日本政府交渉者の上記行動の交渉過程への反映を考察した論文を報告した。また、日本国際政治学会(JAIR)2016年次大会にて、担当した水俣条約関連報告者への討論と、環境分科会設立10周年に際して国際関係論と環境の研究について全体へのコメントを行った。これら3つがそれぞれの学会で高い評価を受けた。 さらに、水俣条約採択(外交会議)3周年を記念した環境省主催の特別公開ゼミに招待された。そこでは、自身の研究内容の一部を、英語と日本語で小学生から大学院生、社会人、その他中高年層までの一般の参加者に、すなわち社会の一部に還元することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
イギリス国際政治学会(BISA)の年次会合での報告で高い評価を受けた報告論文は現在修正され、学会・学術誌に投稿の運びとなっている。また、4月末から5月の頭まで有害化学物質関連3条約(BRS条約)に出席し、参与観察を実施してきた。また、本研究に関連したこれまでの研究活動が評価され、地球環境政治学の文献の執筆依頼、ならびに、UN Environment(国連環境計画、UNEP)のGlobal Environmental Outlookの第6版、越境大気汚染に関する政策効果を評価する役割を担うリード・オーサーの依頼があり、いずれも受けている。これらの作業を進めていくことで、研究内容を広く世界に還元する活動が今後加速することになる。
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Strategy for Future Research Activity |
アメリカ国際政治学会・アジア太平洋年次会議(ISA-AP)での報告がすでに決まっているので、そちらで東アジア酸性雨モニタリングネットワークをはじめとしたアジア太平洋の越境大気汚染の交渉構造を分析した結果を報告する。また、今秋の日本国際政治学会での論文報告も決定している。そこでは、BRS条約に加え、上述の水俣条約や酸性雨強力枠組みの参与観察や聞き取り調査により、交渉構造や制度分析を行った結果を反映する予定である。それぞれ、コメントを受けた後に修正して昨年度までと同様に学術・学会誌へ投稿する。これまでの投稿分も返答があり次第対応する。 現在、研究内容が反映される環境政治学の新しい本に地球環境問題や地球環境ガバナンスに関する複数の章を担当する方向で進んでおり、それを進める。また、別途共同研究での執筆作業もあるのでそちらとのバランスを取りながら進めたい。そして、国連環境計画と仕事についても、本科研に関わり、かつ社会的に影響のある活動になるので、今後も自身の専門分野から日本のみならず世界レベルでより広い社会に貢献していきたい。
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Causes of Carryover |
熊本地震により予定していた調査が延びたため。また、それにより次年度に参与観察を実施する予定の政府間会合が実質増えたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
5月17日時点ですでに次年度使用額を執行し、手続きに入っている。これ以降の予算執行計画にも影響しないことが分かっている。
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Research Products
(5 results)