2016 Fiscal Year Research-status Report
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15K17016
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
平口 良司 千葉大学, 法政経学部, 准教授 (90520859)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 金融政策 / インフレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究においては、現実の消費者行動と整合的な選好として知られる、誘惑と自制の意思決定を考慮した効用関数を用いた貨幣的一般均衡モデルを構築した。具体的には誘惑と自制の問題に直面した消費者のいるミクロ経済学的基礎付けのある貨幣モデルを構築した。当該モデルにおいては、財市場に売り手と買い手が存在し、それらの取引に貨幣が必要なプロセスが明示的に描写されている。そしてそれらの経済主体が、毎期に資産をすべて消費に回すような誘惑にかられ、それを自制することでコストを感じるようなモデリングを行った。そしてそのモデルを用いて名目利子率をゼロにするフリードマンルールが最適な金融政策でないことを示した。ここでフリードマンルールが最適にならない理由は、資産を使い切りたいという欲求が、貨幣を保有すればするほど強くなり、フリードマンルールから乖離することで貨幣への課税の機能が生まれ、そのような欲求へのペナルティとして名目利子率が機能するからである。つまり、インフレーションは誘惑と自制のコストを下げる効果を持つのである。正の名目利子率に自制の効果があることを示したのは当該研究がはじめてといえる。この結果は、財市場の取引が競争的かナッシュ交渉かによらず成立し、非常に頑健なものであった。これらの結果を学術雑誌であるMacroeconomic Dynamics誌(Cambridge University Press)に掲載した。同時に私は、同様の結果が、通常の動学的一般均衡モデル(money in the utility function model)においても成立することを示した。誘惑と自制の効果の導入は、最適金融政策の在り方を大きく変えることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
モデルの構築に成功し、最適な金融政策がフリードマンルールから外れることを示し、その結果を学術雑誌に掲載できたという点で研究は順調に推移していると判断できる。しかしながら研究計画に記載した、財政政策と金融政策の協調の仕方についてまだ明示的な結果が得られていない点で想定以上の進展とまでは言えない。よって進捗状況はおおむね順調といえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、財政政策と金融政策の協調の仕方について考察したい。具体的には資本課税とインフレの共存によりどういう効果が社会厚生上生まれるのか精緻に議論したい。そしてその後、日本経済にとってのぞましい財政金融政策のありかたについて、数値計算を行うことで導出したい。
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Causes of Carryover |
望ましい金融政策については導出できたが、財政政策との協調の仕方や日本経済についての数値計算について研究がやや難航しており、次年度も引き続き研究費を用いて研究を続けたい。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度は、財政学についての理解を深めるべく、京都大学、小樽商科大学、大阪大学など他大学にて研究発表を頻繁に行いたい。そのための旅費として研究費を利用したい。特に財政政策に関する論文を多数書いている京都大学経済研究所の柴田先生と研究に関し打ち合わせをし、その中で助言を得たい。
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Research Products
(1 results)