2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K17019
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
熊野 太郎 横浜国立大学, 国際社会科学研究院, 准教授 (00700494)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | マッチング理論 / 学校選択 / マーケットデザイン / ナッシュ遂行 |
Outline of Annual Research Achievements |
マッチング問題において優先順位に無差別(同順位)を許容するような環境において安定的マッチングを戦略的な解として達成できるかどうかを理論的に分析した。これは、現実のマッチング問題では無差別を含む優先順位が観測されている一方、既存のマッチング理論との間にマッチングメカニズムの遂行という観点から乖離が見られるためである。 本年度は、研究計画に挙げた2つの戦略的解概念のうちの1つであるナッシュ均衡における遂行問題を分析し、十分な結果を得た。具体的には、全ての安定的マッチングは「いかなる場合であっても」ナッシュ均衡による遂行が可能であることを示した。特に、現実的に利用可能なメカニズムを設計することで遂行可能性を明らかにした。この結果は、直接メカニズムに限定して分析を行ってきた既存の手法と異なり、間接メカニズムも含めた上で、遂行可能なメカニズムを探し出した点にも学術的意義がある。 一般に安定的マッチングは多数存在するが、その中でも最も効率的なマッチングのみをナッシュ均衡として遂行できるかを明らかにするのはさらに重要である。この問いに関しても十分な結果を残した。具体的には、安定的マッチングの中でも最も効率的なマッチングのみをナッシュ遂行できるのは優先順位がある種の非循環性が満たされるときかつそのときに限るというものである。この優先順位の非循環性は、現実的には満たされないことが多いので、この結果はある種の不可能性を示したことになる。 本年度は、安定的マッチングのナッシュ遂行に関して十分な結果と多くの知見を得た。来年度は、研究実施計画通りに、ナッシュ均衡とは異なる戦略的解概念である undominated strategy equilibrium による遂行可能性について分析を進めたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画通りに進捗している。研究実績の概要にあるように、当初予期した通りの結果が得られた。またこの結果は論文にまとめて国際ジャーナルに投稿中である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究実施計画にある通り、安定的マッチングが undominated strategy equilibrium として遂行可能かどうかを分析する。また、得られた結果を国際ジャーナルに投稿する。
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Causes of Carryover |
旅費に関しては、研究実施計画にある海外学会への参加および海外大学での滞在研究が日程調整できず、来年度に実施することになったため。また物品費に関しても購入予定であったパソコンの購入機会を逸してしまったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
旅費に関しては、次年度の計画通りの旅費使用に加えて、海外大学において滞在研究を行うことに使用する。また物品費に関しては、昨年度購入予定であったパソコンの新バージョンの購入にあてる予定である。
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