2017 Fiscal Year Annual Research Report
G. P. Scrope's Political Economy and His Argument about Colonies
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15K17035
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Research Institution | Ibaraki National College of Technology |
Principal Investigator |
井坂 友紀 茨城工業高等専門学校, 国際創造工学科, 准教授 (60583870)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | スクロウプ / 自然権論 / 植民論 / アイルランド土地問題 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度の最も重要な成果は,植民論と関わりの強いアイルランドの貧困・土地問題に対するスクロウプの見解を明らかにしたことである. 周知の通り,19世紀アイルランドにおける貧困問題は,理論的にも,また実態としても,植民地(論)と密接に関連するものであった.植民改革論者の1人であるロバート・トレンズはアイルランドの貧困問題が農地の大規模化を通じた農業生産性の向上によって解決されると主張した.だがその実現に不可欠な土地統合は今いる大量の小作農の土地からの追い出しを伴う.そこで彼は土地を失う小作農を移民として植民地に送り込むことを提案するのである. 植民地の経済的価値を基本的には認めていたスクロウプであったが,彼はアイルランド問題を植民(移民)によって解決することには強く反対していた.彼の論拠の1つは農地の大規模化を行わなくとも小規模農業が十分生産的でありうるという事実であったが,それ以上に重要な役割を果たしたのが彼の自然権論であった.スクロウプによれば土地とはそもそも神から与えられた共有財産であり,耕作しうるだけの土地を自身のものとするのは誰もが持つ自然権であった.この自然権を制限するような土地の私有は全体の福祉のために必要とされる限りにおいてのみ認められるものであり,アイルランドの地主による土地清掃は財産権の「曲解」であった. スクロウプが提唱した解決策は,植民ではなく「自国の植民 Home Colonization」であった.これは政府が地主の所有地のうちの「未開墾地の一部を(強制的に)購入」(カッコは原文)し,小規模農場へと改良した上で,人々に販売ないし貸与を行うというものであった.彼によれば,「共同体の権益と自然権とに反して非生産的な状態で目下保持されているような未開墾地を,その法的所有者への補償なしで取り戻す」ことは政府の「絶対の権利」だったのである.
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Research Products
(1 results)