2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K17037
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
高橋 慎 大阪大学, 経済学研究科, 講師 (20723852)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ボラティリティ / 高頻度データ / 注文不均衡 / 流動性 |
Outline of Annual Research Achievements |
まず、金融資産の日次リターンと、日中リターンから計算されるボラティリティの推定値であるRealized Volatilityを、同時に定式化するRealized Stochastic Volatilityモデルを、Azzaliniのskew-t分布を用いて、日次リターンの分布により柔軟に対応できるように拡張した。また、拡張したモデルを日米の株価指数に応用し、データへの適合度が改善されることを示した。この研究成果を、2017年12月にロンドン大学で行われた「11th International Conference on Computational and Financial Econometrics」において報告した。
次に、注文不均衡(買い取引高と売り取引高の差)と価格変化率の間の動的関係を構造型Vector Autoregressiveモデルを用いて定式化し、ボラティリティ予測を改善する手法を提案した。また、S&P 500 E-mini先物に応用し、ボラティリティ予測が改善されることを示した。この研究成果を、2017年6月に香港科技大学で行われた「1st International Conference on Econometrics and Statistics」において報告した。
最後に、Inverse Limit Order Book Slopeと呼ばれる指標を用いて、2011年2月14日稼働のデリバティブ取引システムJ-GATEが日経225先物市場の日中流動性に与える影響を分析した。その結果、J-GATE 稼働前後で日中流動性が有意に変化していることが示唆された。 この研究成果を、2018年3月公刊の「先物・オプションレポート」において発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の研究計画では、ボラティリティモデルによる市場リスクの予測を行い、全体の成果を国際学術誌に投稿する予定であった。しかし、研究を進めていく中で、ボラティリティモデルのさらなる改善や、流動性などの市場の構造をより詳しく分析する必要性を感じ、そちらを優先した。これらの研究成果の一部は学会や研究レポートとして発表しており、平成30年度中に国際学術誌へ投稿する予定である。研究成果は徐々に出ているが、当初の研究計画を修正することとなったため、現在までの進捗動向は「(3)やや遅れている」に該当すると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度に実施した研究では、内生性を考慮していない従来のモデルを改良し、米国の株式指数先物(Emini S&P 500)の高頻度データを用いて、その収益率と取引不均衡(買い取引高と売り取引高の差)の間の関係を分析し、失業率などのマクロ経済指数の発表がその関係に与える影響を検証した。さらに、平成28年度には、内生性と日中周期性を考慮した構造ベクトル自己回帰(VAR)モデルを用いて米国株式指数先物の収益率と注文不均衡の関係を分析した。平成30年度には、このモデルの推定法を改善し、より精緻な分析ができるように研究を進め、その成果を国際学術誌へ投稿する予定である。また、実行できなかった点も含め、引き続き研究を進め、国内外の学会等において積極的に研究成果の発表を行いたい。
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Research Products
(3 results)