2015 Fiscal Year Research-status Report
取引費用理論による公益事業の最適組織形態と効率性の決定要因に関する実証研究
Project/Area Number |
15K17049
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
中村 絵理 神戸大学, 経営学研究科, 准教授 (00611071)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 公益事業 / 最適組織 / 取引費用 / 非効率性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、公益事業の最適組織とその効率性の決定要因について取引費用理論を用いてモデル化し、実証分析を行うことである。公益事業の効率性改善のために従来注目されてきた競争原理の導入に加え、組織最適化が有用であることを示す。研究計画は三カ年である。一年目は、公益事業の最適組織の決定モデルを作る。 一年目である本年度では、分析のための先行研究の整理、データの整理、およびそれによって必要となった松江市水道局へのヒアリング調査を行った。先行研究では、公益事業の最適組織に関する議論で業務の外部委託とそのガバナンス形態が重要な役割を果たすことがわかっている。すでに入手済みの全国98自治体の水道事業データにおいて外部委託に関する項目は詳細に調査済みであるが、委託先企業のガバナンス方法に関しては更なる調査が必要であることが明らかになった。そこで、水道事業の外部委託を積極的に行っている松江市水道局にヒアリング調査を行い、今後の追加調査項目についての検討を行った。 ヒアリング調査では、委託業務ごとに分割して非効率性を測定するよりも、水道事業全体を包括委託している自治体に対象を絞り、全体効率性を測定するほうが多くの政策的示唆を得られるのではないかという結論に至った。そのため、事業体ごとのガバナンス形態の違いに注目した実証モデルの構築が必要であることがわかった。これに従い、事前モニタリング、中間モニタリング、事後モニタリングの3つの側面に分けたガバナンス変数と、取引費用の代理変数としての資産特殊性に関する変数を含めたモデルを構築した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究年度の一年目である本年度では、公益事業の最適組織の決定モデルを作ることが目標であり、おおむねその目的は達成したといえる。最適組織の決定モデルとして事業の外部委託に注目し、委託元組織(自治体)が委託先組織(受託企業)をどのようにガバナンスすれば最も取引費用が節約されるかについての議論を整理した。実証モデル分析で必要な変数を特定化できたことにより、二年目の課題として、足りないデータを2016年夏までに追加アンケートで収集する必要があることがわかった。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度のヒアリング調査により、ガバナンスに関する追加調査が必要であることがわかった。そのため、現在追加調査に向けてアンケートの実施準備を進めている。本アンケートは2016年夏までに実施予定であり、研究年度二年目の目標であるデータ分析は予定通り行われる見通しである。 二年目は、データを用いて組織内取引費用を推定し、最適組織を計測する。三年目は、最適組織からの実組織の乖離と組織効率性の関係を分析する。これにより、取引費用理論の一般化および実証的な説明力の検証を行い、公益事業の分野において主に規制の文脈で応用されてきた取引費用理論を、最適組織形成の分析に応用する。
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Causes of Carryover |
本年度の調査のうち、アンケートによる追加調査の実施は次年度に行う必要が生じたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2016年夏までに行うアンケート調査、ヒアリング調査などのために使用する予定である。
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Research Products
(5 results)