2016 Fiscal Year Research-status Report
取引費用理論による公益事業の最適組織形態と効率性の決定要因に関する実証研究
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15K17049
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
中村 絵理 神戸大学, 経営学研究科, 准教授 (00611071)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 公益事業 / ガバナンス / 鉄道事業 / 取引費用 / コンフリクト |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度では、公益事業のガバナンスに関する一連の研究の一つとして、持株会社制を導入している鉄道事業会社の子会社ガバナンスに関するケーススタディを行った。持株会社制組織において、様々な側面で発生するコンフリクトがどのような取引費用をもたらすのか、その取引費用を削減するためにグループ内人事交流がどのような役割を果たすのかを日本の鉄道事業会社にインタビュー調査を行うことによって明らかにした。その結果、グループ内人事交流として企業間の出向が重要な役割を果たすこと、出向においては賃金や籍に関するルールが必要であること、コンフリクトは出向によって削減されるケースがあること、出向の影響は人事制度や組織構造などに大きな影響を与えることが明らかになった。これにより、現在行われている出向制度が従来認識されてきたような「人事コストを削減するため」という目的のためだけでなく、コンフリクト削減や企業統合のために積極的に活用できること、その際にどのような制度を設計すれば良いのかを示した。本研究は「Managers’ Temporary Transfer to Reduce Transaction Costs between Business Units: Case Study on Japanese Railway Groups having Holding Company Structure」として1本の論文にまとめ、公益事業分野の国際雑誌Utilities Policyに投稿中である。 また、上記研究の発展形として、公益事業のガバナンスに対してコミュニケーションのタイプがどのように影響するのかを分析する研究についても取り掛かった。在外研究先のオーストリア・ウィーンにて、通信産業に携わるオーストリアの企業12社にインタビュー調査を行った。結果は来年度に取りまとめ、国際雑誌に投稿する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で必要となっていた鉄道事業に対するインタビュー調査を終え、結果を取りまとめることができた。また、次の論文に必要な通信産業におけるインタビュー調査についても2017年3月から4月にかけて行うことになっているため、分析に必要なデータは収集できると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は通信産業におけるインタビュー調査をもとにデータを収集し、それをもとに定量分析を行うための先行研究のレビューを行う。さらに、来年度は水道事業の組織ガバナンスについての定量分析も行う予定であり、データはすでに収集済みであり、予備分析も終えているので、予定していた3本の論文は執筆できると考えられる。
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Causes of Carryover |
本研究についての学会発表、英文校閲が次年度に持ち越されたため。現在はデータ収集を終え、学会発表についても論文2本中1本を投稿し、アクセプトされている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に研究を完了させ、予定されていた学会発表と英文校閲を2本の論文について行う予定である。現在、予定していた2本の論文のうち1本が完成し、8月に学会発表を行うことが決定している。その後、英文校閲を終え、国際雑誌に投稿する。予定されていた1本の論文も同様に学会発表および英文校閲を行う。
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Research Products
(2 results)