2017 Fiscal Year Research-status Report
知的財産権保護が環境R&Dに及ぼす効果の理論的研究
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15K17055
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Research Institution | Seikei University |
Principal Investigator |
山上 浩明 成蹊大学, 経済学部, 准教授 (70632793)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 知的財産権保護 / 環境R&D / 環境政策 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、知的財産権保護制度が環境R&Dに与える影響について経済学的観点から分析するものである。 平成29年度の研究では、環境R&Dとして資源利用に関する生産性(省資源性能)に注目した。特に本研究は、枯渇性資源を含む生産の全要素にかかわる生産性を向上させるR&D活動が、知的財産権保護制度の強さ(特許の幅)により刺激されるモデルを構築した。それにより、知的財産権保護が強くなるとき、よりR&D活動を刺激し生産性(省資源性能)を向上させ、長期的な経済成長を達成させうることが示された。他方、より強い知的財産権保護は、現在の枯渇性資源も増加させる効果を持つことが明らかにされた。したがって、短期的に経済成長を押し上げることが唯一の目的ならば保護の強さを最大にすればよいが、長期的(持続可能)な最適経路の達成は必ずしも知的財産権保護を最大にすることを求めないことがわかった。さらに、枯渇性資源の利用が環境汚染の源泉となるようにモデルを拡張したが、枯渇性資源の利用が長期の定常状態にむかって自然と消失していくことから、定常状態において上述の結果から乖離しないということも明らかにされた。ただし、この結果は定常状態上における結論であり、定常に向かう移行経路上の分析については今後の課題である。これらの結果は、堀健夫氏との共著論文として査読付き国際学術誌Environmental Economics and Policy Studiesに採択され、掲載予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
環境R&Dの代表的なものに、生産要素として用いられる資源利用を節約するもの(省資源性能の向上)と、排出される汚染を削減する技術(末端処理技術, end-of-pipe技術)などがあげられる。本課題の研究は主として前者である省資源性能に関係する知的財産権保護や環境政策について研究したものであり、その進捗は順調といえる。 一方、後者の末端処理技術に関するR&Dを想定した研究については、解析的・技術的な問題のためやや遅れている。具体的な困難性として、生産する経済主体と汚染排出する経済主体が同一の時、その主体が直面する費用最小化行動から得られる費用関数の形状が複雑な形状をしてしまうことが挙げられる。これにより、市場均衡におけるR&D活動の大きさを解析的に示すことができず、それ以上の分析を困難にする。
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Strategy for Future Research Activity |
専門家からのヒアリングや共同研究者との推敲を重ねることで解決を試みる。 また、本研究では特定のR&D型経済成長モデルを用いているため、これとは異なるモデルを採用し、本研究課題に沿ったものとしてモデルを構築しなおす必要性についても考慮する。
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Causes of Carryover |
本研究課題の研究代表者の研究場所の変更に伴い、研究の進捗に遅れが生じたことと、当初の計画から支出内容と機会が変更されたためである。 次年度に生じた使用額は、計画延長に伴って順次支出される予定である。
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