2015 Fiscal Year Research-status Report
誘導型と構造型を融合させた実証モデルによる企業結合とカルテルに関する研究
Project/Area Number |
15K17057
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
西脇 雅人 早稲田大学, 高等研究所, 准教授 (80599259)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | カルテル / 企業結合 / 構造推定 |
Outline of Annual Research Achievements |
企業結合(合併)により企業行動が協調的になりカルテルが起きる可能性について日本をはじめ先進諸国の規制当局で懸念されている。しかし、構造推定に依存した既存の実証枠組みは企業行動の変化を適切に捉えることができず,カルテル発生をも考慮した説得力のある企業結合評価を提示できていない。本研究は企業結合によりカルテルが促進される可能性も考慮した総合的な実証評価方法の確立と厚生評価を行うことを目的としている。その為に誘導型と構造型の実証モデルを組み合わせた手法を提示し、構造推計に過度に依存した既存の方法が持つ脆弱性を克服する。 本研究では、誘導型で行動変化を捉え、それをもとに構造型で構造パラメターを推定することで、両者を補完的に用い信頼性の高い企業結合評価を行う。今年度は誘導型の部分に関して研究を行った。具体的には、データを虚心坦懐に分析し、どのような市場構造下で企業行動に変化が起きているのかを実証した。公正取引委員会によって摘発されたカルテル事件について、市場構造がカルテル発生確率にどのように影響しているのかを推定した。推定の結果、これまで伝統的に指摘されてきたカルテル促進要因に加えて、垂直関連市場において、上流下流企業間の垂直結合の度合いがカルテル事件発生に影響を及ぼしていることが分かった。 この結果は、企業結合により企業行動が協調的になるという規制当局の懸念を裏付けるものであり、かつ、企業結合による市場構造の変化を通じた均衡の変化を捉えていない既存の構造推定モデルによる企業結合分析への警鐘と考えることができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
科研費申請時より構想を練ってきた研究計画であるため、データの収集、推定方法の選択など順調に進んできている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、まず、今年度に実施した誘導型の研究を論文としてまとめる。次に、誘導型と構造型をつなげる研究に取りかかる予定である。
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Causes of Carryover |
予定していた英国での学会報告が許可されなかったことと、研究を論文にまとめる作業が若干遅れている為に校正作業をまだ行っていないために差額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度参加を予定していた学会に参加するためと研究論文を海外雑誌に投稿する為に英文校正を依頼するために使用する。
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Research Products
(1 results)