2016 Fiscal Year Research-status Report
送電事業者の戦略的行動を考慮した再生可能エネルギー普及制度の効果に関する理論研究
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15K17058
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
庫川 幸秀 早稲田大学, 理工学術院, 次席研究員(研究院助教) (80749200)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 固定価格買取制度 / RPS制度 / プレミアムタリフ型FIT制度 / アクセスチャージ |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度までの研究成果として、各制度下の市場均衡の比較静学、および再生可能エネルギー促進効果の比較分析の結果を論文としてまとめ、査読付き国際学術誌へ投稿した。残念ながらリジェクトの結果となったものの、査読者からの詳細なコメントに基づき、改訂方針の検討をすすめた。とくに重要なコメントとして、送電部門に対する規制の要素がモデルに含まれていないとの指摘があったので、送電部門に対する規制の効果をモデルに反映させるためのパラメータを加え、修正版のモデルを作成し、市場均衡解を導出した。この修正により、送電部門に対する規制がどの程度機能しているかに応じて制度間の効果の優劣を比較できるようになり、前年度の結果を維持しつつ分析内容を拡張することが可能となった。この点については、当初の計画以上の成果となったといえる。詳細な分析はこれから行うが、規制が十分に機能する場合と機能しない場合で、再生可能エネルギー普及効果における制度間の優劣が変化することが予想され、当初の計画では盛り込んでいなかった重要な知見を追加できると考えている。例えば、垂直統合において送電部門の自然独占事業者が接続コストを設定する際に、規制が十分機能する場合はFIT制度が、規制が十分に機能しない場合は、前年度までに示していたとおりRPS制度が、再生可能エネルギー導入量を増加させる点で効果的となることが予想される。今後、以上の内容を改めて確認したうえで、同様の分析を垂直分離のケースについても行い、社会厚生の比較を行ったうえで改訂版の論文を完成させる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は当初の予定どおり、各制度下の市場均衡解の比較静学、および制度間比較の結果を論文にまとめ、査読付き国際誌へ投稿をおこなった。リジェクトの結果となったものの、査読者からのコメントを反映し、規制効果のパラメータを加えることで、部分的に当初の計画以上の成果も得られた。制度間の社会厚生の比較については、おもにRPS制度下の複雑なメカニズムに起因した困難さがあり、解析的な解決には至っていないが、この点は当初の計画でも想定しており、研究期間内での解析的な解決の目途が立たない場合は数値例による分析を実施する計画である。
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Strategy for Future Research Activity |
修正版のモデルにおける社会厚生の分析を1カ月程度で完成させ、その結果を改訂版の論文に反映させる。次年度前半を目途に改訂作業を終え、国内外の学会で成果報告をするとともに、査読付き国際誌へ再投稿し掲載を目指す。
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Causes of Carryover |
論文の投稿および改訂作業が学会報告のタイミングと合わず、学会報告を見送ったことで旅費の支出がなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
おもに国内外での学会報告のための出張旅費、および改訂論文の英文校閲費用の支出を予定している。
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