2015 Fiscal Year Research-status Report
排他条件付取引契約による参入阻止の経済分析―理論・実験アプローチ―
Project/Area Number |
15K17060
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
北村 紘 京都産業大学, 経済学部, 准教授 (30582415)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 排他条件付取引 / 垂直的取引制限 / 参入阻止 / 競争政策 |
Outline of Annual Research Achievements |
排他条件付取引は,垂直的取引において競合他社との取引を禁止する契約を行うことを指す.これまでの研究により,排他条件付取引の反競争性については,想定する状況ごとの判断が必要であるということが明らかになっている.しかし,現実の競争政策への対応を考えると,更なる状況の整理が求められる.本研究の目的は,ライバルを排除する反競争的な目的で排他条件付取引契約が実現する市場環境を明らかにすることである. 27年度は,理論研究において複数の成果が出た.Kitamura, Matsushima, and Sato (2016a)では,排他条件付取引による上流市場の囲い込みを川下企業の効率性の尺度に注目し分析をしている.一方,Kitamura, Matsushima, and Sato (2016b)では排他条件付取引契約を利用した川上企業の参入阻止の実現可能性を補完財市場の役割に注目し,分析をしている,これら2つの研究について,研究計画段階で得ていた結果の頑健性を確認することが出来た.これらの研究は,国際査読誌に投稿中である. また,国際査読誌に掲載が決定したKitamura, Miyaoka, and Sato (forthcoming)では,関係特殊的投資を利用した効率的企業の参入阻止の反競争性を分析している.本研究では,関係特殊的投資は垂直関係の効率性を高めるが,一旦投資を実行すると川下企業が取引相手を簡単に変更できず事後的なフレキシビリティを失ってしまう点に注目して分析を行った.分析の結果,関係特殊的投資を利用し,既存企業が効率的企業の参入を阻止できる可能性があるが,その反競争性は投資の効率性や特殊性に依存することが明らかになった.この研究によって得られた知見を利用し,「トピックス応用経済学II-財政,公共政策,イノベーション,経済成長-」の11章で排他条件付取引が持つ関係特殊的投資の促進効果について執筆している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
27年度の研究の進捗状況は,おおむね順調であったと考える.まず実験研究については,現在準備中であり,28年度後半に実施する予定でいる.一方,理論研究については,27年度中に複数の研究に取り組み,成果を論文としてまとめることができ,そのうち1本は海外の英文査読誌に掲載が決定している.ワーキングペーパーにしている研究については,現在海外の英文査読誌に投稿中である.また,研究計画段階から取り組んでいた研究についても,分析を立ち上げており,28年度中に論文としてまとめ,学内外の研究会で報告し,海外英文査読誌への投稿をしたいと考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度に,国内外の学会で研究報告を実施できるように,28年度の秋口から研究成果をまとめる作業に取りかかる予定である.また,経済実験の実施が後回しにならないように,早い段階から実施計画を立てる予定である.
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Research Products
(7 results)