2015 Fiscal Year Research-status Report
非認知能力が労働市場の成果に与える影響のメカニズムの解明
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15K17079
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Research Institution | Meiji Gakuin University |
Principal Investigator |
李 嬋娟 明治学院大学, 国際学部, 准教授 (40711924)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 非認知能力 / 教育成果 / 労働市場の成果 / 協調性 |
Outline of Annual Research Achievements |
当初の計画通り、平成27年度には大阪大学GCOEプログラム「人間行動と社会経済のダイナミクス」が実施した『くらしの好みと満足度についてのアンケート』の日本調査のパネルデータを用いて、非認知能力が教育の成果や所得にどのように影響するのかを実証分析した。既存研究に従って、非認知能力は性格5因子(外向性、協調性、勤勉性、情緒不安定性、経験の開放性)で測定し、それ以外には基本的な個人属性と労働市場に関連する変数(経験年数、勤続年数、職種、就業形態)を利用した。特に非認知能力が労働市場の成果に与える影響のメカニズムを明らかにするために、非認知能力が教育の成果や職種、就業形態、労働時間、会社規模のなどの経路を通じて間接的に賃金などに影響するのか、直接的に影響するのかを分析した。
具体的には、非認知能力の中で日本人の平均が最も高かった「協調性」に注目し、協調性が男性の所得に与える影響と、その影響が企業の規模により異なるかを分析した。その結果、協調性は男性の所得に正の影響を与え、その影響は大企業の労働者に重要であることが分かった。また、この協調性の影響は、教育の成果や職種、就業形態、労働時間、会社規模をコントロールしても変化しないことと、協調性は男性の昇進に影響がないことも明らかにされた。これらのことから、協調性は職種や昇進などを通じて間接的に所得に影響を与えるというよりも、直接個人の生産性を高め、それが賃金の上昇に繋がると解釈できる。
この結果は、平成28年2月に大阪大学のワーキングペーパーとし、現在は国際ジャーナルに投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本論文では、協調性の影響が日本独自のものなのかを明らかにするために、アメリカのデータも用いて同じ分析を行った。当初の計画では日本の分析を平成27年度に実施し、アメリカの分析を28年度に実施する予定だったが、同じモデルで両国を比較した方が、非認知能力が労働市場の成果に与える影響のメカニズムを明らかにするために良いと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度には、投稿先雑誌のレフリーから受けたコメントをもとに改訂する予定である。平成28年度の7月から出産・育児休暇を取得するため、当初の計画のように国内外の学会、研究会で研究成果を報告することは限れる。しかし、出産・育児休暇の終了後には、品質の高い研究成果を生むためにも、レフリーや国内外の学会からの多くのコメントを積極的に受けて、良い論文に改訂する。また、出産・育児休暇のために補助期間延長承認を申請する予定である。
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