2015 Fiscal Year Research-status Report
新生児の健康が教育成果・健康資本に与える影響の実証研究と政策評価
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15K17082
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Research Institution | Osaka University of Commerce |
Principal Investigator |
松島 みどり 大阪商業大学, 総合経営学科, 講師 (20634520)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 低出生体重児 / 健康 / 教育成果 / 乳幼児医療費助成制度 / 妊婦健康診査公費負担制度 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、研究(1) [新生児の健康と教育成果・健康資本]、研究(2)-1 [妊婦健康診査公費負担制度と乳幼児の健康]、研究(2)-2 [乳幼児医療助成制度と教育成果・健康資本]の3つを行うこととしている。初年度のH27年度は、研究(1)の分析及び、研究(2)-1の分析のためのデータ収集・入力と分析・論文執筆を行った。また、研究(2)-2についてのデータ収集も実施した。 研究(1)については、都道府県パネルデータを用いて、低体重で生まれてきたこととその後の教育成果・健康資本との関係を捉えるための分析を行ったが、改良の余地があり、結論には至っていない。 研究(2)-1については、まずは多くの社会経済変数が入手可能であった沖縄県の市町村データを用いて、妊婦健康診査公費負担制度と乳幼児の健康を分析した。この分析からは概ね、妊婦健康診査の公費負担回数が増加することで乳幼児の健康状態が良くなることが示されたが、分析モデルには改善の余地がある。 研究(2)-2については日本全国の乳幼児医療費助成制度の変遷を調べた後に、沖縄県のデータを収集し、整理したところである。日本全国の乳幼児医療費助成制度の変遷を調べてみると、制度の実施主体は市町村ではあるものの、それぞれの都道府県内で全ての市町村が同様の制度内容である場合が多かった。一方で、沖縄県においては、助成対象年齢が市町村で異なっており、特に通院の補助については、4歳未満までを対象とする市町村もあれば、15歳年度末までを対象とする市町村もあり(平成27年度9月末日まで)、大きなばらつきが観察された。なお、沖縄県の3歳から15歳までの子どもをもつ親を対象に、乳幼児医療費助成制度の対象年齢を知っているかどうかを質問したところ、「知らない」という回答も存在していた。今後の分析ではこの調査から明らかになったことも踏まえて分析モデルを考える予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「9.研究実績の概要」においても言及しているように、現在、分析や論文執筆は概ね計画通り進捗しているものの、研究(1) [新生児の健康と教育成果・健康資本]については、頑健な結果が得られているとは言いがたく、研究(2)-1 [妊婦健康診査公費負担制度と乳幼児の健康]については、分析に改善の余地がある。 また、予定していた『21世紀出生児縦断調査』のデータ申請については、現在どの項目のデータを申請するかを考えているところであり、この点については、多少遅れている。ただし、これは、データ申請の際に必要項目のみを選んで申請する必要があるため、その準備に時間を割いているということであり、少し時間はかかっているものの、申請そのものに問題があるというわけではなく、概ね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、沖縄県で収集したデータを用いて、研究(1) [新生児の健康と教育成果・健康資本]、研究(2)-1 [妊婦健康診査公費負担制度と乳幼児の健康]、研究(2)-2 [乳幼児医療助成制度と教育成果・健康資本]の全てについて、プライマリー分析を実施している。そして、この分析結果をもとに『21世紀出生児縦断調査』のデータ申請を行う予定である。データ入手後は、より詳細な分析が実施できることが期待できる。 また、沖縄県の新生児の健康や医療政策についてのヒアリングも行いながら、プライマリー分析を発展させて論文とすることを予定している。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は2つあり、ひとつめは予定していた人件費を使用しなかったことである。これは、申請者自身がデータ入力・整理を行ったため必要ではなくなったことにより生じている。ふたつめは、旅費を使用していないことである。これは、学会の発表申し込みの時点では、論文の分析結果について発表できるほどの確証を得られていなかったために、学会での発表をしていないことが原因である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
H28年度は学会での発表及び、データ収集を行った沖縄でのヒアリングを行う予定である。また、論文の英文校閲にも費用が必要となる。加えて、『21世紀出生児縦断調査』の入手後はデータ整理のための人件費が必要となる。
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