2016 Fiscal Year Research-status Report
参照点依存型効用関数による女性の労働供給行動の分析・シミュレーション
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15K17083
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
森 知晴 関西大学, ソシオネットワーク戦略研究機構, PD (00733057)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 所得税 / 配偶者控除 / 構造推定 / 経済実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、表題では女性の労働供給に関する研究を行うべく、理論面の整理を行い、実証研究及び実験研究の方針を定めた。配偶者控除を考えるにあたって、主たる給料を得ている世帯主の配偶者は、世帯主の賃金を所与とした上で、消費及び余暇(育児等の家事を含む)を効用を最大化させるべく労働供給行動を選択する、というモデルを考える。この際、給与が一定額(103-143万円)の範囲にある場合、労働供給の増加は賃金を上げるものの配偶者控除の減少を招くため、実質賃金が低くなってしまう。このことから、女性の労働供給は減少してしまうと考えられる。 しかし、このような労働供給モデルを構造推定した論文では、配偶者控除による女性の労働供給減少はそこまで多くないとされている。この結果は、世間で労働供給抑制効果が非常に注目されている実情とは異なる。 このような現象を説明する理論として、税に対して人々が過剰に忌避行動を示すという行動経済学的な理論を導入する。この現象は、最近の実験研究で検証されているもので、同じように実質賃金が下がった場合でも、単に賃金が下がった場合と税金が上がったことで実質賃金が下がった場合とでは、後者のほうが努力水準の落ち込みが大きいとされる。この理論を労働供給に当てはめると、税によって賃金が減る場合に効用に対してマイナスとなるような変数を導入する。この修正により、配偶者控除による労働供給の現象をより現実的な形で捉えることができる。今後実施する実証分析や経済実験では、この税に対する忌避行動のパラメータを推定する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、女性の労働供給行動を推定するために重要となる経済モデルの策定を行った。このことにより実証分析や経済実験を行うための基礎が固まった。これは研究計画として重要な進展である。しかし、このモデル作成に時間を要してしまったため、分析自体に遅れが発生してしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
分析の基礎となるモデルが固まったので、今後は女性の労働供給に関する実証研究・経済実験に注力して作業を行う。平成29年度前半に実証分析はデータ整理を行い、経済実験は実験計画を策定する。後半には、実証分析は構造推定を行い、経済実験を実施する。
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Causes of Carryover |
平成28年度は分析の基礎となるモデルを作成した。モデルの作成には情報収集の費用のみがかかり、そこまで多くの費用を要しなかった。支出予定であった実証分析に必要なコンピュータ等の購入や経済実験の参加者報酬の支出については、分析の開始が遅れたため支出がなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度は実証分析・実験研究を双方実施予定である。本来の計画通りの支出配分となるよう、研究を遂行する。
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