2015 Fiscal Year Research-status Report
投資家の異質的期待が株価形成に与える影響:IPO後の株価パフォーマンスに着目して
Project/Area Number |
15K17088
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
池田 直史 東京工業大学, 社会理工学研究科, 助教 (90725243)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 新規株式公開 / 長期パフォーマンス / 異質的期待 / 空売り制約 |
Outline of Annual Research Achievements |
公開後の長期株価パフォーマンスの低迷は、新規株式公開(initial public offering: IPO)を巡る特徴的な事実の1つである。この現象を説明する仮説の1つとして、投資家の異質的期待と空売り制約を前提とする理論がある。本研究の主たる目的は、日本における入札方式のIPOから得られるユニークなデータを用いて、この理論が公開後の長期株価パフォーマンスの低迷を説明できるかを検証することである。平成27年度は当初の予定通りに研究を進めた。まず、予備的な検証として、日本における入札方式のIPOにおいて、実際に公開後の長期株価パフォーマンスの低迷が観察されるのかを確認した。次に、公表される入札情報から投資家の意見分布を推定し、推定された分布から楽観的な投資家の割合を算出した。そして、異質的期待と空売り制約の理論が予測する通り、楽観的な投資家の割合が高いほど、公開後の長期株価パフォーマンスが悪くなるのかを検証した。検証の結果は、異質的期待と空売り制約の理論の予測と整合的なものであった。さらに、既存研究において、異質的期待と空売り制約の理論の検証に使用されていた投資家の意見分散度の代理指標(具体的には、売買回転率と収益率のボラティリティー)と本研究で推定した楽観的投資家の割合とでは、どちらが公開後の長期株価パフォーマンスを説明できるかをみた。その結果、説明力は本研究で推定した楽観的投資家の割合の方が高いことが明らかになった。以上の成果をまとめて論文のドラフトを作成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実証分析は当初の予定通り進んでいる。また、その成果をまとめた論文のドラフトも学会等で得られたコメントを反映させて改訂を行い、来年度中には研究雑誌やディスカッションペーパーの形で公表できると予測される。これらのことから、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、学会等で得られたコメントを基に追加的な実証分析を行う。そして、論文のドラフトを改訂し、国際査読誌への投稿に向けて最終原稿を完成させる。
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Causes of Carryover |
平成27年度は、旅費との調整の都合上、予定していたパソコンの購入を延期したために繰越額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度は、平成27年度に購入予定だったパソコンを購入する他に、国際学会報告のための旅費、論文の英文校正費用、投稿費用などに使用する予定である。
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Research Products
(1 results)