2015 Fiscal Year Research-status Report
クラスタ点過程モデルを用いた高頻度外国為替取引の流動性の研究
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15K17089
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
横内 大介 一橋大学, 大学院国際企業戦略研究科, 准教授 (50407144)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 外国為替 / ティックデータ / 流動性指標 / 複合ポアソン過程 / 2分木アルゴリズム / レジーム |
Outline of Annual Research Achievements |
為替のクラスタ化現象(レジーム)を表現するために作られた定常ポアソン過程と2分木アルゴリズムをベースにした Shibata[2006] のクラスタ化のアルゴリズム(クラスタ点過程モデル)を,ガンマ分布を強度の事前分布にすることで複合ポアソン過程に基づくアルゴリズムに拡張できることが明らかになった. また,実際の為替のTickデータに対して開発したアルゴリズムを適用してクラスタリングを試みた結果,フラッシュクラッシュ発生時のような急激な変動を示す期間は Shibata[2006] よりも新しいアルゴリズムが有効であることがわかった.しかしながら,為替の動きが平時の場合には Shibata[2006] の方が有効であることが明らかになったので,我々は 2 つのポアソン過程を切り替えながらクラスタリングを行う新たなアルゴリズムを開発した.その結果,各クラスタ内での確率分布への適合度は以前よりも大きく上昇することがわかった.以上のように,為替Tickデータのクラスタ化現象(レジーム)を説明できるモデルの開発の進捗は予定通り進んでいる. 新しいアルゴリズムの開発によりレジームの分類が大きく進展したことから,各レジームごとに外国為替Tickデータの新たなデータベースをワークステーション上に構築し,各流動性指標を計算するプログラムを R 言語で作成した.しかしながら,データが非常に大きいため,スクリプト言語の R では指標を計算するだけでも相当の時間をとることが明らかになった.そこで,コンパイル言語である Java 言語でプログラムで再作成し時間効率の向上を図っている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新たなクラスタ点過程モデルを提案できるなど,外国為替のクラスタ化現象を説明する部分の研究については予定していた以上の進度で研究が進み,学会発表やワーキングペーパーなどの学術成果も順調にあがりつつある. しかしながら,クラスタに基づく流動性指標の作成についてはデータベース構築を含め,思った以上に時間がかかっている.これはクラスタ化のアルゴリズムが改良されるごとにすべてデータベースを作り変える必要があること,さらにはそれらのプログラムを処理速度が速くないスクリプト言語である R で作ったことに起因する.
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Strategy for Future Research Activity |
レジームごとに分類したデータベースを用いた為替の流動性の実証分析をスムーズに実行できる分析環境を,Java言語のようなコンパイル言語と分析用の言語であるRを用いて構築する.そして,新たな環境の上で作成した流動性指標を元に,Mancini,L. et al.[2013]らの先行研究を再現し,本研究が予想している為替の流動性に対するグロス取引量の有効性に関する仮説等の検証を進める予定である. なお,プログラム作成に思った以上の時間がとられることから,前勤務先である慶應義塾大学理工学部の学生バイト等を活用し,プログラム作成の効率化を図る予定である.
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Causes of Carryover |
最も費用のかかる外国為替のTickデータを一部無償で入手できたこと,予定していた国内学会発表の旅費に対して学内予算が利用できたこと,予定していたデータ整備,プログラム作成のアルバイトが雇用できなかったことが主な理由である.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本研究において,流動性指標の計算プログラム作成の部分の進捗があまりよくないことから,計算処理能力の高い計算機の購入およびアルバイトの謝金に充当する予定である.
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