2015 Fiscal Year Research-status Report
無裁定価格理論に基づく債券・株式のリスクプレミアムの同時推定
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15K17090
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Research Institution | Shiga University |
Principal Investigator |
菊池 健太郎 滋賀大学, 経済学部, 准教授 (60738368)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 無裁定価格理論 / 金利期間構造モデル / 配当割引モデル / リスクプレミアム / 量的緩和政策 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、米国の国債と株式のリスクプレミアムを推定し、推定値の変動について考察を加えることにある。 2015年度前半は、実証研究の分析枠組みとなる無裁定理論に基づく債券・株式の同時価格付けモデルに関する論文の改訂を行い、同論文は査読付プロシーディングスに2016年4月に掲載された。同論文は、名目金利や配当利回りの正値性を保証するモデルを提案するだけでなく、金利期間構造モデルと配当割引モデルを整合的に組み合わせるためのパラメータの十分条件を整理しており、頑健な推定結果を得るための礎をなすものである。 上記論文で得られた十分条件をモデルのパラメータに課し、米国債のゼロクーポンイールドカーブ、米国の株式指数とその配当利回りの時系列データを用いて、モデルパラメータの推定を行った。モデルの状態変数を3つの観測不能な潜在変数として推定を行ったところ、量的緩和政策(QE)実施期間中における、短期年限が極めてゼロに近いイールドカーブの形状を捉えるなど、金利・株式指数・配当利回りに対して高精度の推定値を得た。この結果は、提案した理論モデルが米国の実証分析においては有効であることを示すものである。 また、推定により得られたパラメータをもとに、米国の国債・株式のリスクプレミアムを推定したところ、①QE縮小が金融市場で意識され始めた2013年春以降、短期的な株式リスクプレミアムは大きく上昇する一方、長期的な株式リスクプレミアムは殆ど変動がないこと、②債券リスクプレミアムはQE縮小~QE終了後も僅かな上昇に止まっていること、などが分かった。 上述の推定結果を4つの会議(国際会議2本、国内会議2本)で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実証分析の礎をなす無裁定価格理論に基づく債券・株式の同時価格付けモデルが低金利環境下の金融市場の分析に有効であることを確認できた。提案した理論モデルは先行研究の問題点であった非現実な設定(名目金利がセロと大きく乖離した負の値をとる確率が過大になりうる点や配当利回りが負の値をとりうる点)を改善したものとなっている。当該モデルが市場データと高いフィットを示すことは、推定により得られた債券・株式リスクプレミアムの信頼性を保証するものと評価できる。現在、実証結果の頑健性についての最終的な確認作業を行っているが、実証分析はほぼ終了している。2015年度中に米国の国際会議に参加して参加者と議論することは実現できなかったが、シドニーと大阪で開催された国際会議で分析結果を発表し、海外研究者と議論することができた。以上の点を総合して、研究は概ね順調に進展していると評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
実証結果の頑健性についての確認を早期に終わらせた後、論文を執筆し、国際論文誌へ投稿する。また、本研究の金融政策上の示唆や提案モデルの有効性・応用範囲の広さを対外発信するため、海外学会での発表を行う。
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Research Products
(5 results)