2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K17101
|
Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
竹内 祐介 首都大学東京, 社会科学研究科, 准教授 (30711238)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 満鉄 / 日本帝国 / 満洲 / 鉄道 / 連絡輸送 |
Outline of Annual Research Achievements |
H27年度は,4年間の研究計画の初年度にあたるため,基礎的な統計の収集とその性格の検討・統計数値の入力作業およびそれらを用いた満鉄の連絡輸送の概要を把握する研究をおこなった。同時に,関連研究のサーヴェイをおこない,当該分野の研究水準について正確に把握することに努めた。その成果は,5月に社会経済史学会でパネルディスカッションの一部として発表し,現在論文として投稿中である。以下は,その成果の概要である。 (1)統計編成の変化に関する考察。満洲国建国により,満鉄と満洲国は同じ地域にありながら,建国以後しばらくは,異なる行政区分として別々に統治された。それが1936年の行政組織の改編とともに,満鉄と満洲国内の別の鉄道が,同じ鉄道事業体として把握されるようになると,それ以前の統計とは異なる様式に変更されるため,連続した統計として使用するには一定の限界があることを明らかにした。 (2)上記の限界を克服する手法を開発したうえで,満鉄の連絡輸送の概要を,日本帝国の領域拡大と市場拡大の関係から考察する研究を行った。その結果,(a)日本帝国の支配領域の拡大は,それに見合うだけの帝国市場の拡大をもたらしておらず,日本帝国にとっての満洲市場とは建国以後も基本的には社線沿線市場であったこと,(b)建国前後では社線沿線と満洲国の関係に大きな変化は見られないものの,戦時期になると前者が工業製品を,後者が一次産品を互いに供給しあう垂直的な分業関係を強めるようになったことを明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
4年計画の一年目の課題として,「満鉄統計の書誌学的研究」を掲げていたが,先述の通り,統計の基本的な性格を把握し,利用上の限界点を明らかにしたこと,およびその限界を克服するための手法を開発したことから,おおむね順調に進展していると評価できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
H28年度は,特に満鉄と朝鮮の関係についての検討を進める。H27年度の研究のなかで,満鉄の対朝鮮輸送の内容は,(1)基本的には朝鮮から工業製品,満鉄からは大豆以外の農産品が輸送される農工間の垂直的分業を形成しながらも,(2)両大戦期間中は,満洲→朝鮮の輸送が大きかったが,戦時下になると朝鮮→満洲の輸送のほうが大きくなるという変化をみせ,(3)またその内容も,朝鮮から農産品を含めたさまざまな生活消費財が輸送される,という変化をみせたことがわかっている。この要因について考えることがH28年度の課題である。また,H29年度以降の計画を予定通り進めるために,引き続き,統計数値の入力作業を続ける。
|
Causes of Carryover |
誤差の範囲と考えている。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
雑費などにあてる。
|
Research Products
(2 results)