2016 Fiscal Year Research-status Report
日本自動車産業の生産体制再編における総合電機メーカーの役割に関する研究
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15K17107
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
牧 良明 茨城大学, 人文学部, 准教授 (00554875)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 生産システム / サプライヤーシステム / グローバル生産 / 自動車国産化 |
Outline of Annual Research Achievements |
日立製作所を研究対象の中心に据えて、日本における自動車産業・企業の生産体制の変化に対して電機産業・企業がいかなる役割を果たしてきたのかを、歴史研究と現状分析の両側面から行っている。 歴史研究としては、第二次世界大戦以前において、日本における自動車国産化の課題の中で、日立製作所が電装品供給体制構築において果たした役割を考察した。まず、自動三輪車の国産化においては、発動機製造をはじめとした三輪車メーカーが1930年代に国産化を実現しようとしたのであるが、電気技術である電装品に関しては電機企業に頼らざるを得ず、ここに、日立製作所をはじめとした電機企業への電装品ニーズが発生した。日立製作所は、1920年代までの多角化によって蓄積された技術を総合することによって、高い技術的ハードルを越えることを可能にし、また、1930年代初頭の民需を中心とした多角化戦略の中に三輪車用電装品を位置づけることで、全社的な資源の投入を行って、電装品事業を確立した。その後、日本は戦時経済化し、国産自動車は自動三輪車から四輪トラックへと移行し、生産量も伸びていくのであるが、それに対して日立製作所は、技術的改良だけではなく、フォードシステムの導入によって量的にも対応することを可能とした。戦前期の自動車国産化の実現は、戦後の日本自動車産業の発展の前提条件となるのであるが、その中に、日立製作所をはじめとした電機企業による電装品国産化は、重要な位置を占めるのである。 一方の現状分析においては、日立製作所自動車部品事業の中心である佐和工場の事業内容の変化を見て取ることができる。自動車そのものが電子化する中で、佐和工場は電気機械というよりもソフトウェアを中心とした開発体制へと移行してきた。それは、当然関連サプライヤーに大きな影響を与える。この点の実態調査は今後の課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒアリング調査及び文献調査をほぼ計画通りに進展させている。研究成果の発表としては、日本経営学会関東部会において「戦前・戦時期における「日立製作所自動車部品事業」というタイトルで報告し、報告内容をもとに論文を執筆した(投稿中)。また、現状分析に関しては(株)ひたちなかテクノセンター主催の研究会にて、「自動車産業の競争環境変化と中小企業経営者の役割ー茨城県北・県央における自動車部品製造企業の今後の方向性ー」とのタイトルで報告した。 加えて、上述のひたちなかテクノセンターとの研究上の協力や、茨城大学が日立オートモティブシステムズと「連携事業実施協定」を締結するなど、新しい研究環境もこの間生まれている。こうした環境も生かしながら、継続的に研究を推進していきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで行ってきた歴史研究に関しては、学会報告および論文投稿によって成果を発表する。 今後の研究としては、まずは、日立オートモティブシステムズへのヒアリングを実施する。これまでもヒアリングは行っているが、それの検証とともに、日立オートモティブシステムズの再編過程におけるサプライヤーとの取引関係の変更点、生産拠点のグローバリゼーションに関する調査を重点的に行う。 また、サプライヤーへのヒアリング調査も実施する。特に、神奈川県をはじめ、日立オートモティブシステムズと合併した旧トキコや旧日立ユニシアに係る企業に関する調査を実施したい。 また、サプライヤーへのアンケート調査も実施する。アンケート調査実施に当たっては、ひたちなかテクノセンターとの協力のもとに行う。
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Causes of Carryover |
今年度アンケート調査を実施予定であったが、ひたちなかテクノセンターでの講演依頼があり、その準備のために実施できなかった。しかしながら、講演準備期間及びそれ以降の同社との連携の中で、アンケート調査をはじめ協力してもらえる体制ができ、このことはよりよい調査実施にのために大きな意味を持ったとも言える。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
資料購入に充てる。
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