2016 Fiscal Year Research-status Report
製品開発における組織的な曖昧さへの耐性が開発成果に与える影響の研究
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15K17113
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
宮尾 学 神戸大学, 経営学研究科, 准教授 (80611475)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | イノベーション / 曖昧さへの耐性 / 事例研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,組織的な曖昧さへの耐性がイノベーションの実現にどのような影響を与えるのかを明らかにすることを目的としている。具体的には,(1) 製品開発における開発目標の曖昧さの実態解明,(2) 組織的な曖昧さへの耐性の先行要因の解明,(3) 複数事例研究からの仮説構築と質問票調査による仮説検証,の3つの研究課題に取り組んでいる。 平成28年度は,平成27年度に引き続き製品開発事例の調査分析に取り組んだ。具体的には,平成27年度とあわせて計9件の製品開発事例についてインタビュー調査を実施し,それぞれの製品開発の詳細についての聞き取りを行った。また,それぞれの事例について関連する文献を収集し,併せて分析用のデータとした。 データ分析から,以下の点が明らかになった。第1に,漸進的イノベーションに比べて抜本的イノベーションの方が,製品開発における曖昧さの度合いが高い。第2に,製品開発における曖昧さには,製品開発の進行に対して,ネガティブな側面とポジティブな側面がある。第3に,組織的な曖昧さへの耐性は,曖昧さからポジティブな側面を引き出す組織的な行動として把握することができる。第4に,組織構造(抜本的なイノベーションに取り組む公式チーム)や,トップマネジメントの関与が組織的な曖昧さへの耐性を高める可能性がある。 以上の発見事項をまとめて,2017年3月に開催された第15回Mitsubishi UFJ Foundation International Conference(於 京都)にて「Organizational tolerance for ambiguity in a radical innovation project」のタイトルで報告した。また,同論文を神戸大学経営学研究科ディスカッションペーパーに登録した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
事前の研究計画では,平成27年度に文献レビューによる組織的な曖昧さへの耐性の測定尺度の開発,および製品開発事例の調査を行い,平成28年度には引き続き事例の蓄積を行う予定であり,概ね予定通りに進捗している。 上述の通り,H28年度には,平成27年度とあわせて計9件の製品開発事例についてインタビュー調査を実施し,それぞれの製品開発の詳細についての聞き取りを行った。これらの事例については未公開ではあるものの,事例研究レポートを作成しており,それをインタビュー対象者にフィードバックして,さらに意見交換を行うという手続きを進めている。また,組織的な曖昧さへの耐性の測定尺度の開発については,レビュー論文としてまとめることはなかったものの,10項目からなる測定尺度を開発し,それぞれの製品開発事例の聞き取り時にパイロット調査を行った。この報告書の執筆時点ではそのデータを分析し,さらに測定尺度をアップデートする作業に取り組んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は引き続き製品開発事例の調査・分析を行う予定である。また,ここまでの研究結果をまとめ,学会誌への投稿論文を執筆する予定である。これについては,神戸大学経済経営研究所の遠藤貴宏准教授,およびRensselaer Polytechnic InstituteのLois S. Peters准教授との共同研究として進める予定である。 なお,研究代表者は平成29年9月から平成30年3月まで,米国のRensselaer Polytechnic Institute, Lally School of Managementに在外研究予定である。在外研究期間においては,上述の投稿論文の執筆に加えて,組織的な曖昧さへの耐性の測定尺度の開発,および抜本的なイノベーションに取り組む公式チームとイノベーション成果の関係についての調査に取り組む予定である。
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Causes of Carryover |
インタビューのテープおこしについての費用が,当初予定よりも安かった。また,質問票調査に想定以上の費用がかかることが予想されたため,次年度使用額を基金として取り置くことにした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
質問票調査に使用する予定。
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