2016 Fiscal Year Research-status Report
震災被災地企業の経営者のリーダーシップとCSR(企業の社会的責任)に関する研究
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15K17120
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Research Institution | Tohoku Gakuin University |
Principal Investigator |
矢口 義教 東北学院大学, 経営学部, 准教授 (30537288)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 被災地企業 / 事業承継 / 企業の社会的責任 / 企業不祥事 |
Outline of Annual Research Achievements |
2016年度には、本研究課題についてより多角的な側面からアプローチした。本研究のそもそもの目的は、東日本大震災との関連で果たしたCSR(企業の社会的責任)活動において、その企業行動を導く経営者のリーダーシップを明らかにすることである。そして、本研究において、とくに注目する研究対象が被災地に本拠を構えて活動する被災地企業という中小企業なのである。 このような研究課題に対して、2016年度には、まず被災地企業の事業承継とCSRとの関係性について考察を進めた。被災地企業という中小企業が、事業承継を行い、企業の持続性を担保していくためには、被災地という地域社会からの社会的正当性を得ることの重要性が明らかになった。社会的正当性を獲得するために、企業はCSRを実践していくのであるが、東日本大震災では、被災地企業が社会的正当性を獲得するためのCSR活動が実践されていたのであった。平時では、被災地企業が果たすCSRのことを明確に峻別することができないのであるが、東日本大震災のような有事では、それが明示化された取り組みとなるのであった。 また、被災地企業のCSRを考察するうえで重要になることは、「復興の陰で」行われる不正行為・不祥事を把握する必要性である。2016年度には、震災との関連で発生した企業不祥事について、被災地企業が関与したものを考察した。これにより、被災地企業の震災関連不祥事の特徴が明らかになるとともに、各業界の震災後の業績推移と不祥事との関係が明らかになったと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記のとおり、本研究課題の進捗状況はおおむね順調に推移していると考えている。研究2年目の研究計画は、文献サーベイを引き続き行い、①CSR実践と経営者のリーダーシップについて被災地企業を調査していくことである。岩手・宮城・福島の主要被災地企業を調査していくことである。さらに、②被災地企業のCSRについて、地域ステークホルダーがいかに評価しているかを研究していく。 ①と②については、被災地企業の事業承継とCSRの関係性を考察するなかで、ステークホルダーからの評価の重要性として、社会的正当性という概念の析出、それを獲得するための企業活動について明らかにすることができた。また、その過程で若干ではあるが、地域住民による企業評価についても言及することができた。 さらに、①については被災地企業の不祥事の考察を進めることによって、岩手・宮城・福島の主要被災地企業の状況を業績に基づき定量的に調査しただけでなく、定性的調査も併せて行い、それへの経営者関与についても明らかにした。つまり、企業不祥事について中小企業経営者のリーダーシップの存在が明らかになったのである。 このように被災地企業について、岩手・宮城・福島各県の企業を調査し、CSRに関する研究を進めることができたことから、おおむね研究計画が順調に推移していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の最終年度となる2017年度には、被災地企業のCSRと経営者のリーダーシップに関する研究をさらに進めていく。その際に、検討しているのは以下の3点からのアプローチである。すべてに取り組みには時間的制約はあるが、方向性だけでは示したいと考えている。 まず、これまでの研究をとおして、被災地企業のCSR推進のためには、オーナー経営者の強いリーダーシップの重要性が分かった。そして、持続的に被災地企業がCSRを果たし続けていくためには、この「社会的に責任あるリーダーシップ」が後継者に承継されていくことが重要である。リーダーシップをいかに承継して、被災地企業が持続性を担保するかを研究したいと考えている。 ついで、被災地企業と地域ステークホルダーとの協力関係の下で実践される地域活性化に対する取り組みである。被災地では、復興だけでなく、いかに地域を活性化させていくかも重要課題になっている。それゆえ、被災地企業が地域社会と協力関係を持ちつつ行うCSR活動についても明らかにしたいと考えている。 そして、震災との関係で発生する不祥事研究も重要な課題になると考えている。2016年度には被災地企業の不祥事を調査したので、2017年度には、非被災地企業の不祥事も明らかにしたいと考えている。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が0より大きくなった理由は、機材購入が予想よりも少なかったり、また調査を行う際に、研究代表者が所属する大学の個人研究費を使用する機会もあり、使用計画よりも若干少なく済んだ事情がある。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2017年度の使用計画として、2016年度に充実することができなかった研究環境の整備を行いたいと考えている。現在使用しているデスクトップPCやノートPCなどの劣化が激しいので、直接経費によって整備して、より良い研究環境を整え、最終年度の研究成果構築に努めたい。
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Research Products
(6 results)