2016 Fiscal Year Research-status Report
職業・資格横断的な高度専門職の分類およびその経営管理モデルの研究
Project/Area Number |
15K17134
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Research Institution | Osaka University of Economics |
Principal Investigator |
三島 重顕 大阪経済大学, 経営学部, 准教授 (60454930)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 薬剤師 / 調剤薬局 / 専門能力の発揮機会 / 職務満足 |
Outline of Annual Research Achievements |
高齢化に伴う医療サービスに対する需要ならびに費用の増加のため、近年、薬剤師が医療の専門家として、より多くの役割を担うことが期待されてきている。とはいえ、日本の薬剤師は医師の処方箋の通りに調剤することを業務の中心とする傾向が強く、医療・薬剤のプロとして患者に対してコンサルティングをしたり、医師に意見を述べることは容易とはいえない。換言すれば、医療のプロとして「専門能力の発揮機会」に恵まれていないといえる。したがって、調剤薬局に勤務する薬剤師の職務満足は低い傾向にある。本研究では、所属薬剤師の満足度に影響を与える調剤薬局企業の戦略ならびに経営管理について焦点を当てている。 経営戦略に関しては、2年毎に実施される薬価改定ならびに後発薬の促進に着目した。2年毎に実施される事実上の薬価引き下げのため、また処方箋薬における安価な後発薬の占める割合の増加のため、大手調剤薬局の大きな利益源のひとつである薬価差益は縮小傾向にある。これに対処するために、大手は企業規模・市場シェアを拡大して一単位当たりの仕入れコストを下げる、新規事業を立ち上げる、等の動きを見せている。当該年度は、製薬事業を内部化した日本調剤(株)について分析し、その経営戦略を分析した。研究開発に関わる機会に恵まれた薬剤師は、職務に満足しているというコメントを多く残した。 経営管理に関しては、国際共同研究加速基金も活用し、日英の調剤薬局(Community Pharmacy)に勤務する薬剤師35名(日本:13名、英国22名)に、「専門能力の発揮機会」(Opportunities to Demonstrate Expertise)と「職務満足」(Job Satisfaction)に関してインタビュー調査を実施した。 その他、当初の研究計画で取り上げていた一級建築士等や中小企業診断士などの高度専門家にもインタビュー調査を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
製薬事業を内部化した調剤薬局大手、日本調剤(株)の経営戦略に関する論文は執筆を終え、既に公表している。 薬剤師の経営管理に関する日英両国での研究は大変順調に進み、「専門能力の発揮機会」と「職務満足」の関係性について、既に書き下ろしの論文が完成している。しかし、文量がやや多くなってしまったため、今後はアカデミックな部分と政策提言に関する部分を分離し、前者をインターナショナル・ジャーナルに、後者を国内の学会誌に投稿する予定である。 その他、一級建築士や中小企業診断士の職務満足に関しても共同研究者らと共に執筆し、前年度から複数の論文を既に公表している。
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Strategy for Future Research Activity |
先述の通り、薬剤師の職務満足に関する英文の日英比較論文は2つに分割し、前者をインターナショナル・ジャーナルへ、後者を国内学会誌に投稿する予定である。現在、分割作業を進めている。論文の投稿先に関しては、英国の共同研究者と議論して決定する予定である。そのため、今夏ないし今秋に再び渡英し、完成した各論文について議論・精査する予定である。加えて、日英両国での定量調査の実施についても話し合ってくる予定である。 その他、日本国内で一級建築士や中小企業診断士に関する研究も定性・定量の両面で進め、高度専門職の経営管理に関する研究成果の普遍性を高める努力も続ける予定である。
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Causes of Carryover |
2016年度に新たに応募した科研費(国際共同研究加速基金)が採択されたため、一時的に研究資金が潤沢となり、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度は、国内各地で勤務する薬剤師、一級建築士、中小企業診断士に積極的に定性調査を実施する予定である。 また、カナダの薬剤師に対してインタビューする機会に恵まれたため、同国に出張・調査を行うことに余剰資金を用いる予定である。
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