2017 Fiscal Year Research-status Report
製品デザインを実現するネットワークと知識創造の研究
Project/Area Number |
15K17136
|
Research Institution | Otemon Gakuin University |
Principal Investigator |
神吉 直人 追手門学院大学, 経営学部, 准教授 (90467671)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | デザイン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、価値獲得につながる意味的価値の創造にとって重要な意味をもつ、製品開発におけるデザインの実現に関して、デザイン・マネジメントの巧拙に影響する関係構造(ネットワーク)とコミュニケーションに関する知見を明らかにすることを目的としている。そのために、デザイン、ネットワーク特性、知識創造などをキーワードとした理論研究と、聞き取り、およびアンケート調査による理論の妥当性の確認を計画していた。 実施計画では、平成29年度は、前の2年の理論研究から派生する関連概念に焦点を当てた、さらなる理論構築に取り組む予定であった。しかし、前年度までの研究が不十分であり、派生する関連概念を含んだ検討には至らなかった。成果として得られたのは、まず本研究課題のきっかけとなったワーキングペーパーを論文として整理し直したことである(神吉・長内, 2018)。これは、日本の携帯電話端末メーカーA社のインハウスデザイナー(当時)に対して実施した聞き取り調査に基づく、スマートフォン登場前のフィーチャーフォンにおける携帯電話のデザイン開発の事例研究である。事例の紹介を通じて、工業デザインの開発において、工業デザインと機能設計を統合して考えることの重要性を探索的に論じた。また、組織間の調整(コミュニケーション)の事例として、万年筆インクの開発に関する聞き取り調査を実施した。知識創造理論に関連づけることはできなかったが、開発プロセスを記述した(神吉, 2018)。実施計画では、成果を基に国際学会で報告することを予定していたが、論文の完成時期の遅れ等により、実現することはできなかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
「研究実績の概要」にも記したように、現在までの進捗状況は申請時の実施計画からは遅れていると言わざるを得ない。先行研究に関する文献調査、および他の研究者とのディスカッションは進めているものの、それらを具体的な成果としてまとめたり、発表したりすることは全く実現することができなかった。 これは、端的に述べれば、タイムマネジメントの稚拙さのため、研究に十分な時間を割くことができなかったことに拠る。具体的には、本務校における教育業務にかかる時間が多大である。本務校では、半期に8コマ(演習(ゼミ)・大学院を含む)を担当している。また演習では1学年につき20名前後を担当しており、彼らへの日々の指導(メール等)にかかる時間は決して少なくない。その他の業務もあり、1週間のうち、研究に割くことができる日は1日あるかないかであった。夏期、および春期の休暇中にまとまった時間の確保に努めたが、この間にも細かい業務が入り、論文をまとめるには至らなかった(以上のことは研究代表者に限ったことではなく、全ての大学教員である研究者に共通することとは理解している)。
|
Strategy for Future Research Activity |
「現在までの進捗状況」でも述べたように、日常業務の状況は申請時に予定していたエフォートを本研究に注ぐことを難しくするものであるが、成果を出すことに鋭意努める。平成30年度も、過年度に引き続き、既存のデザインの創出に関する議論、構造的空隙をはじめとするネットワーク構造、および知識創造といった関連諸概念に関する理論研究を行う。そして、それらを論文の形にまとめる。 そして、これらによって得られた知見についてコメントや助言をもらうため、研究会等に参加する(国内出張)。合わせて、平成29年度に実施した企業(マクロミル社)を利用したアンケート調査の結果を分析する。これは、探索的な概念構築を意図したものである。分析の際には、本務校の同僚である原田章教授から助言を得る。同教授は共分散構造分析などの統計手法に明るく、本研究を前に進める力となってくれることが期待できる。 また、時間調整等が困難な状況ではあるが、情報家電メーカー等に調査協力を依頼し、インタビュー調査を行いたい。また、申請書には記していなかった事項であるが、勤務校が位置する大阪府茨木市の商工会議所などに依頼し、同市の中小企業経営者に聞き取り調査を実施したいと考えている。
|
Causes of Carryover |
研究計画は平成29年度までであったが、上記のような理由で本研究に十分なエフォートを割くことができず、今年度も延長して行うこととなった。上記のタイムマネジメントの問題以外には、助言者とのやり取りも含めたアンケート項目の検討に時間がかかり、実施が大幅に遅れたことも理由として挙げられる。得られたデータを用いた成果を発表するため、平成30年度に継続して本補助金を使用する。 使用計画としては、研究協力者とのディスカッション、研究会への参加、ないし聞き取り調査のための研究旅費(国内出張)が中心となる。また、文献調査のため、国立国会図書館等、他機関に出かけることも必要である(本務校の論文データベースでは十分なレビューが困難である)。申請時に検討していた海外出張(調査、報告のための学会参加)を行うことは難しいと思われる。 次に、専門の調査会社を用いたアンケート調査を実施することも計画している。また、成果がまとまった際にはそれを海外に発信するための英文添削にも支出したい。
|