2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K17141
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
長尾 雅信 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (50467065)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 地域ブランド / 協働 / プラットフォーム / よそ者 / place brand |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は地域間連携による地域ブランドの構築の構図を明らかにし、日本の地域創生に寄与することにある。本年度は①既存研究のレビューによる地域間連携における諸課題の明確化と解決の糸口の提示、②次年度実施の事例調査地の選定を行った。 ①に関して、地域間連携を実施するに際し、地域同士の意識差により連携が失敗に至ることが既存研究により示唆されてきた。よそ者を如何に受容し、協働へと展開されるのかが鍵である。そこで地域ブランド論、ならびに関連する内発的発展論や地域づくり論をレビューし、援用しうる知見を導出した。先行研究の知見を統合したフレームを基に、過去の中山間地域での調査を再整理し、地域社会とよそ者の協働が生まれる条件、仕組みについて深耕を図った。それにより地域コミュニティの受容の様相には三つの段階があり、それに伴って受容されるよそ者も異なること、よそ者との交流や協働を促進するプラットフォームが必要であり、それもまた受容水準で変容することを明らかにした。研究内容は論文としてまとめ、学術誌に投稿した。 ②に関しては、産学連携で地域ブランド研究に従事するABIC2研究会や地域ブランディングの実践家、専門家から瀬戸内BP、しまなみ街道、丹後篠山における連携の展開について話を伺った。同様に、宇都宮市における他地域の人々との交流活動と仕組み(ダブルプレイス事業)についてインタビューを実施した。 本年度の研究から、連携型地域ブランドを展開するためには、新しいことを行う上で「基盤」となり、関係者が拠り所とするようなプラットフォームの存在が必要であることが明確になった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の初年度において、連携の諸課題を明確にし、それを解決しうる手段として、プラットフォームの存在とその内実について明らかにすることができた。また研究会等を通じ、次年度に向けた事例調査地先の選定も実施することができ、当初の計画に即した形で研究を進めることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は本年度の研究で導出がなされた理論的フレームワークの精緻化を、さらなる事例調査によって試みていく。フレームワークは中山間地域を中心とした調査から導出されたため、今年度は中核市(人口規模で二十万人以上)にも援用可能な水準へと導きたい。一極集中の弊害を是正し、地域創生を充実させていくためには、これらの規模の都市が自律していくことが望ましい。本年度の調査によると、米国オレゴン州ポートランド市では、移住者やよそ者が次々と地域ブランディングに関わる事業を展開するなど、プラットフォームが有効に機能していることが窺がえる。そこで次年度は同地の調査を優先的に行うこととする。同地へのフィールドワークについては、現地コーディネーターなど研究協力者も確保しており、次年度の早い段階で現地調査が可能である。また、引き続き中山間地域の都市への調査も継続する。当初の予定では「日本で「最も美しい村」連合」の中心を担う地域へのフィールドワークを検討としていたが、九州の対象地域は直近発生した大規模な自然災害の復旧・復興に忙殺されることが予想されるため、状況を逐次把握しながら対応を図る。それに並行して地域ブランドの各種研究会に参加し、情報収集を図り、代替の調査地の選定も検討する予定である。
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